5層後半
レベルアップによる新スキル獲得もそうだが、単純にステータスが一点上がっただけでも十分な成長だ。
経験値を一点でも獲得すれば、それだけ前に進めるようになる。
それはバランパーティも俺たちのパーティも変わらない。
レベル30に達したメンバーも増えつつあり、そろそろバランパーティの方が攻略に王手をかけていた。
当たり前だが、俺はどちらのパーティであっても手を抜かない。
と言うか、下手に手を抜けば死ぬ。それは俺であるかもしれないし、桜花かもしれないし、他の仲間の誰かかもしれない。
そんな状況で手を抜く馬鹿はいない。いたら即刻パーティから外されて終わりである。
「≪神竜召喚≫≪竜身≫レヴィア! ≪マイティガード≫!!」
防御系スキル使用時に≪竜身≫レヴィアを上乗せすることでダメージをほぼカット。≪竜身≫はすぐに解除し、MPコストも最低限で済ませる。
レヴィアのステータスなら大概の攻撃は防ぎきれる。魔法攻撃をしないためヤタの出番はほぼ無いが、ジョブの都合上、レヴィアは出番が多い。次点がマリーで、ピナが続く。ピナのブレスは≪竜身≫状態の俺でも使えるんだけど、俺が使う意味が無いんだよね……。
「≪フレア≫!」
別のところでは桜花が火属性の大魔法を使っている。
桜花は『炎帝』ジョブにより火属性魔法のMPコストが減ったので、魔法の使用回数が一気に増えた。俺の製作する魔導書もコストカットを一番にしているため、大魔法だろうと連発できる。
一回の戦闘で連発するような事にはならないけどね。大魔法はそのほとんどが広範囲攻撃であるため、フレンドリーファイアが怖いから先制攻撃に使うのだ。付け加えると、周囲の森に引火する可能性も高いので乱発すると味方殺しになる。
俺が敵の攻撃を止め、桜花や他のアタッカーが巨人を倒す。
俺のサイクルはそれでいいとして、時々ティナの背に乗って戦況を確認したりと、仕事はそれなりに種類が多い。
できる事が多い分だけ、やらされることも多い。
他のメンバーも遊んでいるわけではないがやる事が固定化されている面々も多いため、慣れなきゃいけない事が多い俺から見るとちょっと羨ましい。
できる事が増えるというのは、すべてにおいてプラスという訳ではなかった。
「それにしても! 大物が増えたよね!」
「どこに居たんだよって言いたくなるな!」
最初の目的地まであと少しとなると、敵の構成が一気に変わった。
出てくる敵にギガース、巨人種が混じりだしたのだ。
巨人種といっても数が一番多いのは身長は5m級だから、こいつらはそこまで《・・・・》大きくない。
普通に倒せる。
問題は指揮官の20m級である。
ガ○ダム級と生身で戦うと考えれば分かりやすいだろうか? ここまでくると≪神竜召喚≫のマリーですら力負けするほど強い。殴られれば、スキルフル使用の俺以外は普通に落ちる。
近接戦を避け、遠距離から矢と魔法をブチ込むのが一番である。
ロボネタによくある、人型巨大兵器は前方投影面積が広い為に遠距離攻撃の的でしかないという戦い方である。
こうなると大砲や戦車でも持ってきたいところであるが、残念ながら大ダメージを叩きだせるほどの性能を持たせられないので、近代兵器の出番は見送っている。
そしてそんな事を考えてしまうのは、消耗が激しくなるからだ。
矢を射るにしてもスキルの上乗せが無いと倒せないし、魔法による消耗は言うまでもない。消耗が大きくなればその先に進むのが難しくなるし、どうしても足が止まる。
なんらかの、ブレイクスルーが必要になっていた。