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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
人形王の魔手
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幕間:領主不在の話し合い

 グランフィストの領主の館。

 そこにはテミスをはじめ、多くの重要人物が集まっていた。ただし領主はいない。


「あの男どもには逃げられたのか?」

「はい。相川共々、蘇生されたことを確認しました」


 話し合われているのは、相川と名も知らぬ老人、2人のテロリストの事である。

 尋問が上手くいかず背後関係も分からぬままに殺したが、これは考え無しの行動ではない。背後関係を探るために殺したのである。

 相川如き(・・・・)なら返り討ちに出来る、その自身の表れであった。



 テミスは今回の打ち合わせに参加するヤマト村の者に視線を向ける。


「それで。お前たちは相川とは縁を切ると言うのだな」

「もちろんです」

「我々はテロリストではありません」

「ならば良い。お前たちの、今後の働きに期待する」


 ヤマト村の者達は、村の会議で相川の切り捨てを決断した。

 彼らの大半はグランフィストを嫌っているし仲良くしたいという気持ちを捨てているが、だからと言って戦争行為やテロしようとは思っていない。ネットで色々と悪口を書き込むように、井戸端会議でこき下ろすぐらいである。


 むしろ犯罪者になった相川を切り捨てることに躊躇いなど無かった。

 犯罪者と自分たちが同一視されるのも嫌だが、それ以上に新しい“生贄”の登場に喜んだ面があるのだ。

 一般大衆とは自分たちより“下”の、日々積もる不平不満の八つ当たりをする“殴っていい相手”を求めるものなのだ。

 その相手の地位は高ければ高いほど良い。自分たちの元リーダー(一番上)というのはその条件に合致する。



 そうやって仲間を切り捨てた連中の躊躇いの無さに「忠義が無い」と心の中で呟き、その方が都合がいいと気持ちを切り替える。


「相川がどのように仲間を集めたとしても、ヤマト村の者が呼応しない限り我々に負けはありません」

「レベルがいくら高かろうと、上限があります。ならば我らの数こそ、最強の証と言えるでしょう」


 次に発言を求められたのはアゾールやジョンである。


 ジョンは冒険者こそ辞めたものの、そのまま領主のところで騎士に叙勲された。無職ではない。

 騎士と言っても国の騎士ではなく、グランフィストの騎士である。その立場は国から見れば私兵の様なもので貴族位のような公的地位とは言えないが、それでも軍の中では上の方の立場であった。


 アゾールの方は衛兵隊の隊長なのでこの場にいる。

 軍の隊長もいるが、街の防衛という意味では彼が最高責任者である。もしも討伐となれば軍が動くのだが、その役目は剣に例えられるものであり、楯ではないのだ。

 レッドは気が付いていないが、今のアゾールは騎士爵の地位を持つ貴族でもある。ジョンよりも立場は確実に上であった。



 二人は相川を脅威とみなしているが、対抗不可能なものとは考えていない。

 軍の兵士も衛兵も、レベル30こそいないものの、レベル20以上はかなりの数がいるし、彼等を死なせず相川や老人を打ち取るぐらいは問題ないと思っている。

 蘇生されたことで協力者の存在が浮き彫りになったが、それでもレベル30が何人もいるとは考えていない。

 構成員がどれほどか分からないが、そんな大規模な組織であればグランフィストや他の都市でも有名になっているだろう。東方の冒険者が国に囲い込まれていることを考えればそちらの線も無く、したがって小規模な組織の犯行と考えられる。



 だからと言って油断するわけもないのだが。


 逆に今回の件で防衛体制に問題があることがはっきりと分かり、大軍には強いかもしれないが、少人数のテロリストに対応しきれていないと思われているのだ。防衛体制の見直しは必須である。

 これからアゾールは相当忙しくなる。


 ジョンの方も、外の巡回を行うために人を出さないといけない。

 軍だって人員に余裕があるわけではないので、これから無理を強いられるだろう。





 領主は領主で王都へと対外折衝に出ているため、この場での意思決定はテミスに任される。

 いくつかの確認と情報共有を経て、グランフィストは動くのであった。

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