開戦
「バラン、まずは先制攻撃をお願いします」
「おう、任された」
初撃はバランが受け持つことになった。
全員で相手の知覚範囲に入らない場所に下がり、バランが矢を用意する。
「≪アローレイン≫」
そしてバランが矢を放てば、ホブリンたちは頭を貫かれ一撃で絶命した。
「後退!」
あとはみんなで森から抜け出るように走り出した。
森での戦闘は視界が利かず、いつの間にか囲まれていると言う事が多々ある。
だから自分たちは森から出て、囲まれない状況を作るのが先決なのである。
もしも森の奥深くに入った後であれば、諦めてそのまま戦闘に入るか大きく迂回して戦闘を回避すべきなのだが、今回は森に入ってあまり経っていないので出る事にしたのだ。
「やっこさん、仲間を殺されお怒りの様だぜ!」
「距離は?」
「向こうの方が早い。ま、それでも森を出るぐらいは出来らぁな!」
俺には敵の姿を確認できないが、感知能力の高い連中は姿が見えなくても問題なく互いの位置関係を把握できる。
追手は来たようだが、森の外までは逃げられるようだ。助かるね。
30分ほど森を走ると、スタート地点が見えてきた。森の外に辿り着いたのである。
「全員反転! 迎え撃つ!」
森から出た事で、視界が一気に広くなった。
これならいつの間にか気が付かないうちに囲まれるということも無いだろう。
ジョンの指示に従い、森の方に体を向け、武器と盾を構える。
しばらく呼吸を整えていたが、5分ほども経つと敵の姿が見えてくる。数が多く、まさに大群といった圧力がある。
敵は5層のモンスターで、個々の戦力だってこちらに劣るとは言っても油断できるほど弱いわけではない。
戦争には直接参加しなかったから、これが俺にとっては初の大規模戦闘になるだろう。
俺は気合を入れ直すと、わらわらとではなく、森からなのに整然と姿を現したホブリンたちを睨むのだった。