敵影発見
スタート地点から森に入り1時間ほど歩くと、ゴブリンそっくりの上位種『ホブリン』がいた。
数は5しかいない。聞いていた話よりもずっと少ないじゃないか。
「ホブリンはああやって偵察部隊をいくつも出す。
今回は、そうだな……少なく見積もって70、多ければ100ぐらいか」
数が少ない事に拍子抜けした俺だが、隣を歩いていたバランからすかさず小言を言われた。
バランは遠距離戦のエキスパートであり、≪気配察知≫スキルをカンストさせているため、その察知能力は疑いようがないほど正確だ。
5層のモンスターは大部隊で行動するとは聞いていたが、まさか偵察部隊などの用意があることを想定していなかった。
かなり、敵を甘く見ていたようである。
バランの話ではホブリンは半数を使っていくつものグループを作り、残る本隊の周辺警戒をするという。
で、各個撃破と最初はやっていたのだが、それが間違いだ、それではいけないとすぐに気が付かされた。
あいつらは戦闘状態になるとこちらにはよく分からない方法でもって別の部隊へと連絡を入れるのだ。そして周辺にいるホブリンは集結し、総力戦になってしまうのだという。
「遠距離攻撃による殲滅でも駄目だったの?」
「ああ。マジで何をされてるか分からねぇ。はっきりしてるのは、音でも臭いでもねぇって事だけだ」
話を聞いたイルの疑問にバランも色々と試したんだと愚痴を漏らす。
俺はその話を聞いて、ふと思い出したことを言う。
「『ホブリン偵察隊』の特殊能力、≪仲間を呼ぶ≫じゃないか、それ?」
思い出したのはTCG時代のモンスタースキルだ。
TRPGでは削除されたが、状況を考えるに、それが打倒じゃないかと思ったのだ。
なお、特殊能力の効果は「自身を破棄し、手札にある『種族:ホブリン』のカードを場に出す」というものだ。本来は使用に手間のかかるホブリンを場に出すために使われるのだ。
もっとも、ホブリン種族の強カードはあまりなかったのだが。
俺の説明にバランやジョン達は唸り、今は対策が無いことを悔やむ。
なんとなくで話してみたがそれなりの説得力があったようだ。今まで俺がこの世界のジョブやらスキルやらに詳しかったことも説得力があった材料だろうね。
状況は理解できたし、それなら俺達のやる事ははっきりしている。
「普通に戦う」
ただそれだけである。
もともと今回は集団戦の慣らしで来たのだし、ここで多くの敵と戦えるならそれに越した事はない。徒歩1時間で大きな収入があったと思えば、むしろ効率がいいと言えるだろう。
奴らホブリンたちは今のメンバーで戦うのに“手ごろ”じゃないだろうか。
ジョンやバランも、今考えるべきは連携確認などが優先だと思考を切り替えた。
さぁ、狩りの時間だ!!




