表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
ギルド/PK
26/320

墓荒らし

2話同時投稿です。


2/2

「うそ、だろ?」


 用意した墓石が足元に落ちる。隣の桜花も目を見開き、驚きを露わにしている。

 幸い、俺の足の上には落ちなかったようだ。10㎏程度のそこまで大きくない石であったが、足に直撃していれば骨折は免れなかっただろうから。


 そんな俺の前には、倒れた卒塔婆もどきと掘り返された穴があった。





 卒塔婆もどきだけの墓を作ってから2日後の夕刻。

 俺はメイドトリオの為に用意した墓石を持ってきたのだが、その墓が暴かれていた。


「墓守の爺さん!!」

「なんだい、うるせぇなぁ」

「墓荒らしだ!!」

「はぁ!? マジか!!」


 慌てて墓守の所に行き、状況を説明すると、墓守は苦々しげに呻いた。


「ちっ、俺の顔に泥を塗るたぁ、やってくれるじゃねぇか」


 墓荒らしから墓を守りどうにかするのは墓守の仕事の一つだ。だというのに墓を荒らされたとあっては、墓守の面目は丸潰れである。職業的な信用に大きく関わる事の為、墓守の爺さんは唸るような声で苛立ちをぶつけた。


 墓守と外に出ると、外には獣型のモンスターが座っていた。イヌ科の、白い狼タイプのモンスターだ。レベルアップで進化しているのだろう、名前は分からないが、今の俺など一発で倒せそうなほど強い事が何となく分かる。

 どうやら、この墓守は『獣使い』のジョブを持っていたようである。この白い狼は墓守の指示を待っている。


「臭いで追う。嬢ちゃんらのコアはすぐに取り返してやらぁ」


 狼に墓の近くの臭いを嗅がせ、墓守は見る者の背筋を凍らせる種類の怖い笑みを浮かべる。

 歴戦の戦士を思わせる風格を見せ付ける墓守と共に、俺たちは街へと繰り出した。





「ちくしょぉぉぉっ!」


 俺達が狼に案内されたのは、『生産活動推進部』のギルドハウスだった。


 墓守が自信をもって臭いを追うのを専門にしていると言うだけあって、犯人はあっさりと捕まった。

 今は犯人、ギルドのサブマスターの一人が狼に踏みつけられながらも暴れている。ただ、レベル差がありすぎるために何をしても無駄なんだけどな。


「アリッサ、キーリ、システィーナ! 僕を助けろ!!」

「「「イエス、マスター!」」」


 サブマスの命令に従い、3体の(・・・)メイド(・・・)サーヴァント(・・・・・・)が現れ、狼に向けて無謀な攻撃を繰り出そうとした。

 しかし、逆に狼の一撃を受けて一瞬でガラクタと化す。


「あぁぁ、僕のメイドサーヴァントが!!」


 狼は壊れたメイドサーヴァントの臭いを嗅ぐと、器用にコアを傷つけないように取りだした。

 お粗末な話であるが、彼女らがウチのメイドトリオのコアを使って作られた魔法生物だったようである。


「なんなんだよ! なんなんだよ、お前ら! 何の権利があって僕のメイドサーバントを殺した!!」

「うるせぇよ、墓泥棒。いい加減喋るんじゃねぇ」


 俺は一言も喋らず、口を開かず、暴れるサブマスを見ている。


 哀れ。

 いや、醜悪。


 このサブマス相手に、一言だって喋りたいとは思えなかった。


「自分のメイドが壊されて怒った奴が、他人のメイドを殺すのかよ!!」


 『生産活動推進部』はケミストリーさんが所属していたギルドである。活動方針と言うかノルマが俺の性に合わず所属しなかったが、それでもこれまで悪いイメージの無いギルドだったが。今日この日、俺の中で「ここは無い」と思えるほどに印象が悪くなった。

 周囲の目も、どちらかと言えばサブマス側に加担するもので、俺を見る目は冷ややかである。



 その後、『生産活動推進部』のギルドマスターと今回の騒動に関する話をした。


 サブマスは解任、ギルドを放逐処分。そこまではギルドとしての対応で、あとは衛兵の所につき出してくれと無関係を決め込んだ。

 逆にギルドハウスで暴れた件に文句を言われ、墓守の方に賠償請求までされた。


 墓守の爺さんは犯罪者を捕縛するためだと言い、その犯罪者が捕縛当時ギルド所属である事を理由にそれを突っぱねる。

 しばらく言い合いが続いていたが、結局は墓守の言い分が通った。ギルドが無関係になったのは捕縛後の話で、騒ぎのあった時は確かにこのギルドのサブマスだったのだから当然である。



 俺は一言も口を挟まなかったが、ギルドハウスを出ていくとき、ギルマスは俺の方を憎々しげな目で睨んでいた。


 そして、この日から俺の悪評が日本人を中心に広がっていくことになる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ