レアボス
ダンジョン内での戦いは、命の危険を伴うけど消化試合に近い。
何度も何度も、何ヶ月も戦えばこんなものである。
相手の行動パターンが一定であるため、何をしてくるのか手に取るようにわかるのだ。気分は動画で予習したあとの弾幕ゲーのハードモード。変な事さえしなければクリアできる、あれである。
当たり前だが心に余裕がある事もあり、突発的な事に対処できるように心がけてはいる。
敵の行動ロジックが同じであっても、戦場の微細な変化でやる事が変わる事もある。ごく稀に変化があったりもする。
心に余裕を持つことと、油断することは違う。
俺達はサクサクと敵を潰し、ボスのいる島に辿り着いた。
ボスの情報はギルドで何度も聞いているし、あまり緊張してはいない。
俺達が攻略するまで待っていると言っていた仲間たちの為にも負けられないが、気負うほどではない。うん、いい感じに心が落ち着いている。
そんないい気分でいた俺は、目の前のボスを見て思わず突っ込んだ。
「レアが出やがった!?」
ダンジョンのボスは、基本的に固定である。
だが稀に、本当にごく稀に、それ以外のボスが出てくる。
ボス島にいたのはドラゴン。
それも俺が相棒と頼る、ティナよりも上位種である厄介な存在。
『翠玉宝竜』。
プレイヤーでもレベル30なら手が届く存在だが、完璧なまでに格上の敵が現れた。
翠玉宝竜は、大きさはそう大したことがない。
頭から尻尾の先、全長は20mぐらいで、体高は3~4mといったところだろう。ティナとあまり変わらない。正面から見たなら2tトラックぐらいと言い換えてもいい。
しかし、それが厄介なのだ。体が小さいと言うことは被弾しにくいということであり、面の攻撃で与えるダメージが減る。空を飛ぶ相手なので、意外とどころかかなり厄介な特性を持っていることになる。
ついでに、ドラゴンだけあって、硬い。空を飛ぶ相手だから桜花の魔法がメインになるが、魔法にも高い耐性を持つ。物理的魔法的に硬いのだ。
さらに魔法能力も高く、攻撃手段が豊富。
ちょっとどころではないピンチだ。
「聞いてないぞ、こんなのが出るなんて!!」
レアボスは何度か出たらしいが、これは聞いていない。
思わぬ強敵に、俺は撤退を考えた。