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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
復讐者の権利
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幕間:新米冒険者

「二人とも『召喚士』って、凄いね」

「あとは何を召喚する召喚士になるかだけど……お姉ちゃんは決まった?」

「私は『竜召喚士』を目指すわ」

「えー! 私も『竜召喚士』がいいのに!」


 セフィラとピコ。

 元大臣の娘たちは、グランフィストで冒険者になった。

 少々の奇縁を上手く使ってジョブ解放した彼女らは、他の者よりも有利な条件で冒険者生活を始める事に成功している。


 とは言え、つい最近まで戦闘とは全く縁の無かった彼女らである。訓練を始めたとはいえ、その戦闘能力はお察しだ。素人に毛が生えた程度である。

 まだダンジョンに行くことも許されず、同期の仲間を募る段階であったが。

 ジョブ解放したとはいえ、レベルを上げなければ弱いままなのだ。



 そして、二人は新たに手にした『召喚士』をどういった方向で成長させようかと相談している。


 ただ、二人には致命的な欠陥があった。

 二人の良く知る召喚士とは、ギルドマスターのレッド一人だけだったのである。


 ギルドにはもう一人有名な召喚士『妖精女王』のミレニアがいるが、彼女はどちらかと言うともう一つのジョブ『無限倉庫』の方が有名である。召喚士としての評価は一切聞こえてこない。


 他にも召喚士はいるが、名を響かせるほどではない。

 召喚士の数の少なさの悪影響である。



 一応、ジョブ解放後にアドバイスは受けている。

 『竜召喚士』のメリットとデメリットを考えるとはっきり言って二人とも同じ方向性を選ぶのは無謀だ、と。パーティバランスが悪すぎるとも言われた。


 片方が『竜召喚士』を選んだのなら、もう一人はもっとMPコストの軽い召喚モンスターを選んでおけ。

 ドラゴンパピーは一番コストが重いから、コストが軽く召喚できる種類が多い『幻獣召喚士』がお奨めだ。


 それがレッドの意見である。



「でも、属性を変えればいいんじゃないですか? 戦闘ごとに召喚する順番を考えるとか。やりようはあると思うの」

「そんな事はないわ。戦闘できる回数の少なさは致命的よ。連続戦闘は後半戦では必須。マスターレッドみたいに私達だけでどうにかできると思っちゃダメなの。もっと平均的な戦闘力を高めないといけないわ」

「だから交替で召喚すれば――」

「常に召喚していられる1体が――」


 妹のピコはレッドの意見を横に置き、持論を展開する。彼女は瞬間最大出力を重視するというか、自分の意見を通すためにどのような理屈を言えばいいかと思考を重ね、戦術でフォローできると言葉を紡ぐ。

 対する姉のセフィラは自分が素人であるという認識から言われた言葉を素直に受け入れ、安定した戦闘スタイルを目指す。


 尖った戦闘スタイルはハマれば強いが、外すと大惨事である。一般的にはレッドの意見が正しい。

 特に、生き返りを前提としないのなら生存能力の高さを核に戦術を組み立てる事が必須である。初期の冒険者に復活費用の工面は不可能と言っていいので、ごく当たり前の、常識的な意見を通すなら従った方がいい。



 だが、しかしなのだ。

 尖った構成というのは、一流を超える超一流になるには無視しえない博打でもある。

 上を目指すのに無難というのはあり得ない。

 それを本能で察しているのか、ピコは中々譲らない。



「もう少し、考える時間が残っているわね。結論は後にしましょう」

「他の人の意見も聞いてみた方がいいのかな?」


 この二人が冒険者として大成するのか。

 それはまだまだ分からない。

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