見捨てられた娘たち
人間、生きていれば予想外という事はいくらでもある。
残念ながら大臣は娘二人を完全に見切っていたようで、大臣は動かなかった。念のために娘の所に行ってみたが、人が向かった気配は無い。
しょうがないので、娘さんらは返却しよう。
娘に恨みは無いし、わりとどうでもいい。
それよりも大臣に対する仕込みにしておこう。
親に見捨てられた娘は、どんな結果を招くかな?
まぁ、俺も大臣は潰すけどな。
ろうそくに火を灯し、二人の様子を確認する。
娘二人は半死半生と言うか、三日近く水だけ生活だったので、死にかけである。
最初は健康的で美しかった顔も、げっそりとやせ細りいかにも不健康だ。ついでに排泄関係はそのまま垂れ流しなので、臭いが酷い。
縛られた状態では水も飲みにくかっただろう、倒れないように固定された桶の周りはびしょびしょだ。
女二人の細腕ではできる事も無いだろうと思わなくもないが、それでも自由にするリスクより縛っておく安全を取った結果がこれである。それなりに罪悪感が湧くけど、それを抑えてトドメを刺す事にした。
「やぁ、ご両人。解放の時間だよ」
二人に反応は無い。虚ろな顔でこちらを見ている。
生きているのは確かだし、目も開いている。なら気にせずに続けよう。
「君らの親御さんに迎えに来るように言っておいたんだけどね。
残念ながら、本人が来るどころか兵の一人も出す気が無いようだ。本当に、本当に残念だよ」
二人の目から、涙がこぼれた。
自分の状況が理解できてしまったのだろう。もしかすると、家に帰っても殺されたりするかもしれない、そこまで酷い状況だと。
いや。そこまで理解できなくても、見捨てられたというだけで十分にショックか。助けが来ると信じて耐えていたのかもしれないな。
「さて。私から、君たちに四つの選択肢をあげよう」
心苦しくはあるが、話はそのまま続ける。
「一つ目。親のところに帰る。
二つ目。親から逃げるように、他の都市まで行く。
三つ目。この場で俺に殺される」
この話は形式的な物だ。深い意味は無い。
「四つ目。俺の旗下に加わり、親と戦う道を選ぶ」
どれを選んでも俺のやる事は変わらないし、彼女らの運命は変わらない。
自分の為に人の運命を捻じ曲げ幸せを奪うと決めた身だ。これはただの確認にすぎない。
二人から猿ぐつわを外し、喋れるようにする。
だが喋れるようになっても二人は俺に答えず、力を失ったかのように横たわったまま。絶望しているんだろうね。生きて幸せになるビジョンが見えなくて。これまであった生活の全てを俺に奪われて。
「この場では答えられない様だな。また、あとで来るとしよう」
完全に自由にして、ここから出て行けるようにした。
三日分の食料を置き、水も追加。あとは無理矢理酒を飲ませ、カロリーを摂取させた。栄養価で言えば全然足りないけど、今はこれでいい。
さて。
そろそろ大臣にせっかく用意してもらった迎撃準備を無駄にしに行くかね。
俺が大臣とまともに戦う理由なんてないんだよ。
地下室に潜入して何をやっているのか暴いてみたり、執務室で何か不正していないかを確認したかったけど、それを諦めれば簡単に勝てるんだ。
竜召喚士、それも風に特化した奴相手に喧嘩を売った意味を教えに行こう。