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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
復讐者の権利
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襲撃の夜

 誘拐事件を起こした結果を、街を歩いて確認してみる。


 街には何も、変化は無かった。


 仮にも大臣の娘、そろそろ輿入れという時期のを狙ったというのに、何の変化も無かった。

 これはつまり、“無かった事にしよう”という事かね?

 下手に騒ぐと大臣の面目丸つぶれというのもあるが、攫われ一晩以上経ってしまった場合、純潔が守られたかどうかという話に発展する。そうなればまず間違いなく、婚約は破棄されるだろう。



 一応だが、この場合も想定している。

 推測だが、相手は攫った娘を使った交渉を想定しているか、娘を攫った時点でこちらの目論見が達成されていると判断した、と考えられる。

 何もしないという事は、そういう事だと思う。


 ならば今度は攫った娘の情報を流し、相手を誘導すればいいだろう。「大臣独りで来い」は絶対に不可能だろうから、「大臣は必ず来い。護衛は5人まで認める」と書けば大臣も動く、かもしれない。

 たとえ大臣が動かずとも、それなりの数の兵士を動かしてくれるはずだ。

 駄目だったら駄目だったで、そのように割り切ろう。



 問題は、相手がこちらの想定を上回った時である。

 敵の兵士が動いたとして、それがブラフだった場合だ。例えば大臣が私兵の中でも実力のある者を動かしたとして、俺が忍び込んだ後にそれを引き返させる可能性が微妙に残っている。

 そうなった場合はいろいろと露見してしまう事になりかねず、俺の身の破滅である。その時は大臣邸で神竜にしたティナを暴れさせてから脱出という流れになるので、大臣は自分の命を守るためにも、是非俺の策に乗って騙されて欲しい。


 俺が上手くいけば何か隠してるっぽい物を暴かれ、俺が失敗すれば命を失う可能性がある。

 どんな結末を迎えようと、とりあえず大臣の破滅だけは確定路線で。


 相川でも引っ張り出さない限り、大臣に俺をどうにかする手段が無いのだ。

 その相川は火の都まで遠征中という情報が入っているため、俺にとって最大の危険人物はすでに王都を去っているのだが。





 その日の夜、魔法で姿を消したティナがお嬢様の居場所を矢文で届けるというお仕事をして戻ってきた。

 使ったのは≪インビジブル≫という姿を消す風属性の魔法なのだが、実際には薄く、ぼんやりと姿が見える程度にしか姿を消さない。ゲーム時代なら何も見えなくなるような魔法なのだろうけど、リアル化した事でカミサマ(運営)から修正が入ったようである。これはどこのネトゲだと言いたい。



 この≪インビジブル≫もそうだが、ゲームに出てくる魔法というのはリアルで使えるとかなり酷い効果の物が多い。

 最悪レベルなのが≪メテオストライク≫という最強攻撃魔法なのだが、普通に考えたら隕石が落ちてくるというのは都市一つが消え去るレベルの大惨事である。TCGの時は戦闘中に使う魔法ではなく儀式魔法という戦闘前に使う魔法だったのだが……なんにせよ、TRPGになった時にオミット()された魔法である。

 他にも≪ポルモリフ≫という水属性の魔法は、いわゆる変身魔法である。TCGの時はモンスターの種族を変更するだけの魔法であったが、TRPGの時だと最大1日の間、別人の姿を自分に張り付けるというかなり無茶な効果であった。変えられるのは光学的な外観だけで、触ってみれば触感はそのままという欠陥の多い魔法だが、普段使いには十分な効果である。


 正直、犯罪に使おうとすればかなり酷い事になると思う。俺は立場が平民の様なものなので調べられないが、この世界にはちゃんとした対応策があると信じたい。



 便利な≪インビジブル≫の効果は横に置き、これで相手がどう動くか。


 準備時間少な目の短期決戦だが、それは相手も同じこと。

 仕掛けた側であり高レベルな俺の方が状況は有利だが、この王都に根を張り地力のある大臣の方には数の力がある。


 どちらが勝つかは、もうすぐ分かる。

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