孫娘は身内なので
法律が自分を守ってくれないなら、法に従って死ぬ気は無い。
俺には悪法も法だと言って毒の杯を呷るつもりなど無いのだ。
そんなわけで雨の降る中、今回の標的である大臣邸にお邪魔して、あと2~3年ぐらいで結婚なお年頃のお嬢様を2名ほど拉致してきました。
高レベルっていいね。ゲーム的に考えると、低レベル向けの行動ならほとんどの判定が成功するんだし。
「んーー!!」
「むぅー!」
魔法で起きないようにした後、猿ぐつわを噛ませ喋れなくして、腕や足も縛りミノムシにしてから担いでこれらをスラム街に作った拠点へと持ってきたわけだ。
さすがにこれら二つをエンデュミオン邸へ持ち込んだりしない。宿として使わせてもらっているが、それ以上はNGなのだ。
今回用意したこのスラム街の拠点は、人が簡単に出入りできないように壁を強化しただけのセーフハウスである。侵入経路を知らなければ、まず入ってこれない。
事前に協力者に依頼して作っておいてもらったのだ。さすがに何の準備も無しにこういった事はしない。
「さて、お嬢さんたち。悪いけど、二人にはここで3日ほど隠れ住んでもらう。
騒ぎを起こした場合、君らは悪い男たちに襲われる事になるよ。御家の権力など知らずに、ただ見目のいい娘がいるとしか考えないケダモノのような連中にね。
運が良ければ助けてくれる誰かの耳に声が届くかもしれないけど、挑戦するかどうかはお任せするよ。
まぁ、聞こえてくる声に耳を澄ませてから試すべきだとは忠告しておくけどね」
ちなみに。
ここはスラム街でも歓楽街のような場所である。
よってエロいことをしている連中の声がしっかり聞こえる。彼ら彼女らには声を押さえる理由が無い。それすら客引きと考える奴ばかりである。
深夜である今も、雨音よりも大きく嬌声が響く。
お嬢様たちは自分のいる場所がどこか理解して、顔を青ざめさせ言葉を失った。
二人の強さはたったのレベル2でしかなかった。自分の身を守る事など出来はしないだろう。
何かあったら自分がどうなるか分かる程度の性知識を持っていてくれてありがとう。覚悟は決めているけど、さすがに性的に襲うのはまだハードルが高かったんだよ。分かってくれなきゃ襲う必要があったし。未遂で済んで俺も嬉しい。
俺はその態度に満足すると、猿ぐつわやらなんやらはそのままに隠れ家を後にした。
水の入った桶の場所は教えておいたけど、マジでそのままである。あの場所に居させるのは3日までなので食べ物は用意していない。水さえあれば食べなくても死なないから気にしない。
殺しはしないけど、これで俺も犯罪者。
犯人には大々的に動いてもらわないといけないので仕方が無かったとはいえ、やっぱり気分が悪い。
復讐とか報復は相手の身内を巻き込むのが定石だけど、それをどこまで広げて解釈するかは個人差が出る。
憎い相手を殺しただけでもその影響は大きいし、多くの人を巻き込むのだ。悪党一人を殺して万事解決とはいかない。それを考えれば、これもセーフだと強弁できなくも無いけど。
誰を相手に喧嘩を売ったのか分からせるためとはいえ、人の世で生きるとは本当に面倒である。




