表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
復讐者の権利
240/320

覚悟完了

 エンデュミオン氏から宿泊の許可をもらった事で、俺に対する嫌がらせや軽い妨害はずいぶんやり難くなっただろう。

 念のためは色々とあるけど、宿を経営する平民ではなく貴族相手に何かするのでは法的にも罰則を与えやすい。軽い気持ちで出来る、「平民相手ならこの程度はやってもいい」が通じないのは大事だ。

 貴族の地位をゲーム的に言えば『下位(貴族の)ダメージ(不法行為は)無効(合法)化能力』みたいなものを持っているのである。


 身分差は日本人には馴染みの無い法律だけど、友人や同僚などの身内にやってもいい事でも上司にやったらアウトって事は結構あるし。その派生と認識すればあんまり違和感が無かったりするんだよね。

 国を日本のようなものと認識するから間違うんだ。正しいイメージとしては国は一つの企業体なのである。そう考えると職業選択の自由が無いのも普通なんだよね。会社に所属すると、自分のやりたい事ができる部署に配属してもらえるとは限らないし。





 今回の、俺の目的は「貴族への報復」である。

 当たり前だが、俺がやったとバレてはいけない。捕まっちゃうからね。

 いや、正しくは「俺がやったかもしれないと疑っているけど、証拠が無い」状況を作り出したうえで「グランフィストまで逃げ切る」のが勝利条件だ。


 酷い話だが、この世界の法律はそこまで重視されていない。ザルのような運用がされているのである。

 だから疑わしいから殺すという事をされる事があるし、それをやった後に「ごめーん。証拠が無かったけど、もう殺しちゃったし有罪って事でいいよね」と言いだしかねなかったりする。

 なので無罪を主張できる状況にしつつ、相手が合法的に手出しできない場所へ逃げるわけだ。



 例えば人の物を盗んだら、一回目は指を一本切り落とす。二回目は腕を切り落とし、三回目は首を刎ねる。

 だからその回数の判断は指や腕の有無で、指が無かったら「こいつは盗みを一回やった」と認識される。

 しかし、世の中には別の事情で指を切り落とした人もいるわけで。誤解が民衆だけならしょうがないと諦めも付くが、裁判でもこの考え方が支持され、盗みをやったかどうかの調査は行われない。指が一本でも欠けていたら問答無用で腕を切り落とすのだ。


 じゃあ何らかの方法で指を生やしたら、また指一本に戻るのか? その通りである。

 貴族は指をもう一度生やす手段を持っている事も珍しくなく、同じことを繰り返しても腕を切り落とされる事はあまりない。


 当たり前だがこの手の逃げ方は貴族の特権として知れ渡っており、慣習化しており、既得権益と化している。

 分かっていて対策をしようとしないのだ、この悪法は。

 こういったところは日本の弁護士とかと同じである。悪を悪と知りつつ、法によって裁けない状況を作って身を守るのだ。





 今回に関しては本当に有罪に見えるので、相手の主張が正しいんだろうけどね。

 それを言い出したら相手も俺を殺そうとして、その証拠・証言があるのにそれを突っぱねているから、どっちもどっちだ。やっている事は同列である。


 身分差で相手の方が正しいというのが、俺は無き寝入りするのがこの世界や王国的には常識的な行動である。


 が、ムカつく事はムカつくし、何より泣き寝入りしてしまえば相手がさらにつけ込んでくる。

 なので法律とか常識とかは全部取っ払い、ダブルスタンダード(二枚舌)だとかトリプルスタンダード(三枚舌)のような事でもやってみせ、自分を守るのだ。



 俺の基本は、守るべきものは、己の命と安心の老後である。

 ついでにスカッとしたいというのもあるのでオプション(ついでの嫌がらせ)も乗せるけど、無理矢理売られた死合(しあい)ぐらいは買うんだよ。

 そこに是非は無い。


 じゃないと死んじゃうからね。

 俺は死にたくないのだ。その為には少し酷い事もするよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ