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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
東方交易録
235/320

幕間:グランフィストの識者たち

 結局、今回の出来事でレッドは東方に行く機会を得る事ができなかった。そしてこの流れはもう覆らないだろう。

 レッドを一時的にでいいからグランフィストから切り離す作戦、それを画策していた面々は苦い顔をしていた。



「まさか、ここまで簡単に予想が外れるとはね」

「ジャニスがきつく当たりすぎたんだ。あれは基本的に執着心が薄い。目的意識の誘導は容易だが、目的達成の難易度が高ければ最優先目標の為にいくらでも考えを変える。

 柔軟と言うより、空気のように希薄な奴だな」

「私の当たりはそんなにきつくなかったはずですよ? むしろあの程度の言葉で諦める彼の意識に問題があるのでは?」

「ああ、その通りだな。そしてそれを知りながらも上手く誘導できなかった間抜けがここに居る」

「酷い! それならもう少し手を貸してくれてもいいじゃないですか!」

「失敗の最大の要因は計画が杜撰であった、そういう事だろう。私の不徳の致すところだな」

「そんな! テミス様のせいではございません!」

「なら、やっぱりジャニスの責任と言う事にしておこうか」

「……ええ、それでいいですよ、もう」



 その場所に居るのは6人。

 いかにも貴族といった少年に、ジャニス、ヤマト村の人間が二人、細身の少女、そして冒険者のジョン。


 貴族の少年はこのグランフィストの領主の継嗣、長男のテミスという。ジャニスはそのお付きである。

 ヤマト村の男たちは相川がいない事を不安に思い、グランフィスト側に寝返った勢力の代表だ。ヤマト村も一枚岩ではなく、それでもまとめ上げていた相川がいなくなれば数ヶ月で内部分裂するのも仕方がない。

 ジョンはジャニスの友人として、レッドの監視役としてこの場に参加している。


 紅一点である細身の少女は今回この場には関係の無い存在であり、今は無言を貫いていた。

 ただし、この場にいる全員が共犯者のような間柄であり、今回のたくらみに関わってはいないが、所属という意味では同類である。





 今回の騒動、裏でテミスが色々と動き回っていた。

 レッドを危険視し、本格的な脅威になる前にその力を削いでおこうというのが彼らの目的である。

 具体的には、冒険者ギルドにおけるレッドの影響力の低減が目標となる。


 彼らの計画では、レッドとそのクラン仲間をグランフィストから外に出し、その間に他のクランを領主側に取り込もうという流れを作るつもりであった。

 ヤマト村の人間を冒険者ギルドに送り込み、乗っ取りをかける事も視野に入れている。

 全てが上手くいく訳では無いし、強硬に動けば反発もあるだろうから、最終的にはレッドの基盤を少し揺るがす程度の結果にしかならないはずであったが。



 なお、テミスはレッドに対する悪意とか敵意といった物を持ち合わせていない。単純に、領主以外に強大な武力を持った人間がいるので首輪を付けようとしか考えていない。

 これはレッドだからというより、大きな力を持った冒険者ギルドに対して必ず行われる、ちょっとした恒例行事のようなものであった。


 そしてこの恒例行事、失敗しても(・・・・・)構わない(・・・・)程度の計画でしかない。

 全ては領主としての経験値を積むためだけの、ちょっとしたイベントにすぎないからだ。

 人を上手く使い、人を上手く支配するための練習だったのである。


 レッドの思惑の大半は見抜かれていて、その上で見逃されていたのである。


 もっとも、彼らもレッドをコントロールしきれていないので痛み分けとなるのだが。





 今回の集まりでは、一連の流れの問題点の洗い出しと今後の計画の立案が行われる。


「しばらくレッドは放置で構わないな?」

「はい。六道家の兵士を鍛えるために2層や3層で経験値稼ぎという話ですので、レベルアップは当分先になるでしょう」

「ならば、王都の連中はどうだ?」

「難しい所ですね。今回の東方交易が終われば、すぐにでも動きそうです」

「そうか。あれ以上は我らのメンツに関わる。必ず阻止せよ」

「はっ!!」

「囚われている日本人は解放できそうか?」

「洗脳済みなので、難しい、です」

「そうか。お前たちにとっては同朋の為だ。励め」

「はい」



 彼らは彼らでグランフィストの利益を出すために動き続ける。

 しかしその動きの大半は人の目につかないものでしかない。


 レッドがそれに気が付くのは、もっともっと先の話であった。

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