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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
東方交易録
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ジャニスを使う

「何と言うか、行き当たりばったり過ぎて計画性が無いのと、先に起こる事を考えもせずに物を引き受けるのはどうかと思いますよ」

「いや、最初のはともかく、兵士をジョブ解放してダンジョンに連れて行くのはちゃんと考えがあるから大丈夫。

 どっちかと言うと、腹案はあるからその確認をお願いしたいな」

「腹案?」

「そうそう。こんな感じだけど――」





 パーティ編成の条件だが、最初にパーティリーダーを選出する。で、リーダーがパーティへの参加申請を受けるか、リーダーがパーティへの参加依頼を送り相手がそれを受け入れればパーティが組まれた状態になる。絶対条件として、リーダーとメンバー双方の合意が必要になる。

 パーティリーダーの設定も同じだ。リーダー本人がパーティの誰かをリーダーに指名し、相手がそれを受け入れればOKである。基本的に双方の合意が必要だが、こちらは例外があり、リーダーの死亡時にはパーティ過半数の承認があれば他の誰かがリーダーになる事ができる。

 そしてパーティ離脱は完全にメンバーの自己判断だ。リーダーの承認は必要なく、本人が外れたいと思えば外れる事が可能である。


 このパーティ編成にはもう少し条件があって、毒や酩酊、睡眠不足などによる意識混濁(こんだく)時には自意識による判断ができないとされ、依頼と承認、申請ができない仕様である。

 だから酔っぱらわせてその間に、と言う作戦は出来ない。


 あくまでも意識がはっきりしている時に、パーティの再度参加を受理させなければいけないわけだ。

 だまし討ちは出来ないと考えていい。



 それで、相手を納得させつつパーティ離脱や再参加を受け入れさせるには、色々と使う必要がある。

 そう、例えばグランフィスト領主の権威とか、ね。





「しかし、そこまでして東方の刀を手に入れたいのですか?」

「そうそう。それがあちらの出した条件なんですよ」


 今度の相談相手はジャニスである。

 ジャニスに「東方行きを諦める条件」として「六道家の護衛のジョブ解放」を提案してみたのだ。

 また、同時に「俺の戦闘能力並びに生存能力の高さを示すテスト」も提案している。


 相手がどちらを選んでも俺の利益になる提案をしているわけだ。

 最初により不利な話をする事で、その後に出したもうちょっとマシな提案を自分で選んだと思わせれば、多少不利な条件でも意外と呑まれるのである。


 ポイントは一度に二つの提案をしなかった事と、周囲を巻き込み外堀を埋めた事。

 あとは相手に知られたくない条件を隠したうえで、自分が受け取る利益をちゃんと見せておくのも大事である。

 俺の場合は最初から刀を手に入れるのが最低条件と言うか絶対条件だったため、その利益を確保している事をはっきり提示することである程度は信用を得ている訳だ。



 無論、交渉担当であるジャニスは俺よりもこういった話では強者である。

 ぽっと出の俺よりも優秀なのは間違いない。


 しかし、ヤマト村の連中が交易を始めるとは考えていないはずである。いや、考えていたとしても俺とは結びつけないはずだ。

 前回の、ヤマト村の奴らを連れて六道家に行った時は、連れていった奴がヤマト村の奴だと分からないように変装させたので大丈夫だ。

 俺とヤマト村の連中が敵対関係にあるなら普通はそんなふうに考えない。


 ただ、社会人になると嫌いな奴や関わりたくない奴とでも仕事仲間であれば、そこそこに上手く距離を持って関わるぐらいの事はやるものなのだ。

 嫌っている、敵対している事と、関係を持たない事は別なのである。

 社会人は清濁併せ呑むのだ。





「まぁ、上と話をしてみましょう。あなた方だけでなくこちらにも何らかの優遇措置を検討して頂けるなら、ジョブ解放やダンジョンでの訓練も許可するとしましょう」


 最終的にジャニスは、俺が外に行かない事を条件にだが、ジョブ解放の件だけはどうにかしてくれると請け負ってくれた。



 これで条件クリア。

 俺が東方に行くのはしばらくお預け(・・・)になるが、最低ラインの仕込みは出来た。

 ギルドでの準備が無駄になったが、別の所で猶予ができたから少し怒られるだけで済むだろう。


 数年後を考えればあんまり良くないんだろうけど、直近の問題は解決したかな?

 分かりやすい利益も確保したし、俺としては悪くない結果だ。



 これで王都のクソ貴族を潰す方に力を注げそうだ。

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