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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
ポーション問題
214/320

幕間:海の彼方より来る

 グランフィストはヨーロッパ風異世界である。髪の色はカラフルだが、それでもヨーロッパ風異世界である。

 なぜなら、人の名前がカタカナ表記だからである。


 冗談は横に置き、ヨーロッパ風と称される理由は街並みや服装の方だろう。都会の家は石やレンガと主に使っており、服はもちろん洋服だ。和服ではない。

 このあたりは気候の問題が大きく絡み、日本の様な夏に雨が多く湿度が高めで冬に雨が少なく乾燥した国と、ヨーロッパのように夏は暑く空気が乾燥していて冬でもそれなりに温暖で雨が多く水分が不足しにくい国との差分である。

 そういった意味でもグランフィストは(南部の)ヨーロッパのような場所である。


 なお、田舎の家はヨーロッパも日本も関係なく、木材を多用するか土の壁にわら葺屋根がほとんどである。よって、田舎の景色を見た場合はヨーロッパか日本かを判断するのが難しかったりするのだが。





 そんなグランフィストに、見慣れない服装をした一団が姿を現した。


「半年の旅路を、早いと見るか遅いと見るか。船の上にいただけでは旅情も何も無かったがな」

「お(ひぃ)様、陸路のみであれば一年二年と言われる距離です。半年と言うのは十分に早いかと」

「ふん。分かっておるわ。さっさと領主に挨拶しに行くぞ」

「はっ」


 旅装故に簡素であるが、和服を着たその集団は東方と呼ばれる場所にある国の者達である。

 護衛の戦士たちに加え東方の『荷運び』である『飛脚』の人足を含め、200人を超える大所帯。それが馬車に揺られて、徒歩(かち)で、行商の許可証を見せグランフィストの門をくぐった。

 彼らはグランフィストと東方を結ぶ交易をおこなうキャラバンであった。


 その中に、異彩を放つ集団がある。

 明らかに上物と分かる馬車、そして馬に乗り周囲を固める50の『騎馬侍』達。そして姿を見せないが、『忍者』系ジョブの『無影』までもが潜んでいる。

 いかにも貴人と分かる人間とその護衛である。彼らはまず間違いなく商人とは思われないだろう。運んでいる物資(にんげん)に対し、守るべき人間が明らかに過剰である。馬車一つに付ける護衛の数ではない。



「それにしても、この国はなかなかに“怖い”な。見たか、あの門衛を」

「はい。少なく見積もっても位階は十を数え、十五を超える事は無いでしょうが、明らかに強者と分かる者達でした。それに街中にいる衛士も似た様な実力です。質も数も充実しておりますな」

「それに引き換え、妾の護衛どもは……」

「仕方がありません。三職の者と我ら一職の者では格が違います」

「ちっ」


 東方には聖属性の迷宮(ダンジョン)がある。当然のように日本人たちも召喚された。

 しかし、東方にある全ての国が日本人の恩恵を受け取れたわけではない。ほとんどの国はその恩恵を受け取れずにいて、その恩恵を独占しようとする将軍家の国が世の春を謳歌しているだけである。将軍家は迷宮関係の利権を握っているため、自然とそうなったとも言うが。


 あまり関係は無いが、この世界の東方は鎌倉時代前半の日本が一番近い状態である。しかし鎌倉幕府は一つの国であり、小国が集まって連合を組んでいる状態の東方はどちらかと言えば欧州国家と教皇庁の関係に近いかもしれない。



 この集団、日本人の恩恵を受けた者は一人としておらず、それがこの集団と将軍家との距離を感じさせる。

 将軍家と地方の関係を御恩と奉公とは言うが、彼らはどちらかと言えば六波羅探題に睨まれる西国のような立場である。遠くの将軍家よりも近くの他国との方が仲が良いのだ。中央に対する反骨の気風が高い事もあり、より冷遇される事にもなっている。


「爺、ここで必ず日本人を手に入れるぞ。例えこの身を差し出しても、だ」

「はい。良き縁を結べるよう、この老骨も死力を尽くすとします」



 日本人を持つ国とそれ以外の国。その格差はレッドが思ったよりも根深い。

 海を越えてグランフィストまで波及する程度には。

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