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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
ポーション問題
213/320

幕間:黒幕

「小娘1人死んでおらんではないか!! 虎の子の魔術師を使ったのだぞ! なぜ上手くいかん!!」

「例の者の仲間には騎士が多く、殺すにはもう少し手勢が必要かと……」

「そう言っておったからこそ魔術師を使ったのだ! 何人も簡単に用意できる訳では無いのだぞ! 気取られぬようにするだけでもどれだけの労力が必要だったか、少しはその足りない頭を使え!!」


 王都。

 とある貴族の屋敷にて、欲深い男の叫びが木霊する。


 主人である男は、懐刀である家宰の男に対して感情任せに怒鳴りつけている。

 家宰は普段であれば有能な部下であったが、今回は大失態とも言えるミスをしてしまったため、家宰は主人に対し、下げた頭を上げられないでいる。



 主人である貴族が(くわだ)てたのは、レッドの殺害である。

 もしくは、その仲間の殺害でも構わなかった。


 フリーズドライという大儲けの手段を奪われた貴族が、その報復を行ったのである。レッドは隠していたつもりであっても、貴族にしてみれば犯人捜しはとても簡単であったのだ。


 この報復行為は短絡的ではあったが、それには理由がある。



 この世界では死者を復活させる手段があるため、貴族やそれに準ずる重要人物は殺したところで意味がないことが多い。


 ただし、苦痛を与えるという意味では無駄でない為、しばしば警告の意味で暗殺などの襲撃が行われる事がある。

 その意図は嫌がらせや警告といった内容である。もしくは金銭的損失であったり時間稼ぎなどか。街中で襲撃を行った場合に本気で殺せるといった事は考えていない。もしも本気で殺そうとするなら、街の外にいる時を狙う。


 今回は単純に、下手を打ったレッドに対する警告でしかない。





「それで。魔術師は回収できたか?」

「それが、完全に壊されておりまして。復帰は絶望的です」

「ちっ。まぁ、良い。グランフィストの連中なら、それぐらいはやるだろう。

 ならば、こちらが気取られた可能性はどうだ?」

「そのあたりは抜かりありません。主に繋がる物は一切与えておりませんので」

「口惜しいが、しばらくは様子見だ。その間に新しい駒を用意しておけ」

「はっ」


 貴族は今回使った魔術師がまた使えるようになるかを確認してみたが、その答えは芳しくない。

 通常、貴族の反逆者や高レベルで危険な犯罪者は殺したところで闇の神官などが復活させてしまうため、殺すことができない場合がある。

 そういった時には、しばしば残酷な方法が用いられる。


 生きたまま、人格を壊す方法だ。


 拷問にかけて五感を物理的手段で奪い、生殖機能を潰し、人格が崩壊してから仕上げとして脳の一部を破壊し、それから殺すのだ。

 ここまでやると復活されたところで人間に戻るのが著しく遅れたり、二度と復帰できなくなったりする。


 復活手段があると言う事は、それに対する対策も研究されていると言う事である。



 (くだん)の魔術師も例に洩れず、アゾールら衛兵の手によって完膚なきまでに人としての機能も人格も破壊された。


 街中で暴れられたことで、衛兵の面目は完全に潰されている。

 その怒りは想像を絶し、報復は執拗なまでに行われたのだ。魔術師が人として復帰する可能性はまず無いだろう。


 家宰も復活直後の魔術師を見たが、あれは人間とは言えない姿だったと思わず恐怖に震えるほどであった。

 魔法によって体は再生されたが、心の方はもう絶望的であろう。





 今回の件で貴族は魔術師というかなり使い勝手の良い駒を失った。

 しかし、この貴族はそれなりに大物であった。

 よって魔術師という損失は痛手ではあっても、致命的ではない。まだまだ日本人の(・・・・)ストックは残っている。


 王都に伏した貴族の牙は、次の機会を狙って研ぎ澄まされていくのだった。

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