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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
ポーション問題
212/320

襲撃者

 人間って奴は、慣れる生き物だという。

 環境への適応能力が高く、逆に、ぬるま湯に浸かっていればすぐに危機感を失う。


 ダンジョンから離れ、安全な所で生活することが多くなっていた。

 戦場に立っても、結局は運搬役だけに終始し、戦わずに済んだことも大きい。

 だからか、ヤマト村の連中と敵対するとか予測を立てても、経験値稼ぎに積極的になり切れない自分がいた。


 危機感が、足りていなかった。

 だから、同じことを繰り返す。


 ――いやもっと酷い結果を招いてしまう。





 それに気が付いたのは、イルだった。


 彼女は俺と同じく騎士系統のジョブに就き、『魔法騎士』と魔法防御力の高くなるジョブについている。

 『魔法騎士』はどちらかと言えば「守る」ためのジョブではなく、物理防御特化の『鎧騎士』同様「生き残る」為のジョブで、生存能力が高い。

 それが、最悪を回避するいい方向に作用した。



「イル!? おい! しっかりしろ!!

 そうだ、ララを呼んでくれ! 早く! って、桜花は居ないんだった……」


 街中で買い物をしていた時の出来事だった。

 市場調査をデートと言ってそのままにしたのでは不義理だろうと、装備品ではなく装飾品としてのアクセサリを見に行き、甘味でも食べて帰ろうというデートの計画を立てていた。

 ちょうど、装飾品を見終えてどこかに甘い物を食べに行こうと店を出たところだった。



「『治癒の薬』、手持ちは……これでなんとか」


 当たり前だが、武具の類は身に付けていない。

 あれはダンジョンの中だから装備が許されるのであって、街中では住人へのプレッシャーを与えるからと、基本的に許されていない。例外は任務中の兵士や衛兵ぐらいだ。応用的には街の外へと出入りする時などがあるが、状況次第では職質される事もある。

 だから、俺達はただの防御能力の無い麻布の服を着ていた。



「よし。意識は回復しないけど、死ぬのだけは避けれたかな」


 そこへ、遠距離からの不意打ち。

 行き交う人の中への、魔法攻撃。


 完全な不意打ちであり、周囲を巻き込む突発的なテロ行為。

 俺を狙った刺客がいたのである。


 イルは何もできなかった俺を≪カバーリング≫で守り、初撃を耐えた。

 相手のとは距離があったために2撃目、3撃目までを許してしまい、イルはそれでHPがマイナスに突入し、気絶してしまった。生死判定は成功してくれたようである。……現実を認めたくないのか、どうも思考がゲームに偏るな。

 俺は条件反射でティナを≪召喚≫し、相手を制圧した。気絶はさせたが、一応、死んではいない。そこはティナが上手く気を利かせてくれた。



 俺がすぐに動けていれば、イルを危険な目にあわせずに済んだ。

 少なくとも、日常でも楯の使用許可ぐらいは貰っておき、装備しておくべきだった。平民だろうと護衛を雇うべきだった。

 全てを甘く見過ぎていた。





 別に、死んでも生き返るじゃないか。

 そんなことを言う奴もいるだろうが。それに対し、俺はこう言うだろう。


 ふざけるな、と。


 生き返るから死んでもいいなんて考え方を俺は出来ないし、したくない。

 それは俺の生き方じゃない。

 死と蘇生を余白(マージン)に含めた考え方は、生きる事を舐めたあり方だ。蘇生の予約を切らせる気は無いが、そもそも死なないようにするのが大前提である。最後の手段を使う事を前提にする戦いなど、馬鹿のする事だ。



 俺はもっと自分を取り巻く状況を正しく認識すべきだろう。

 少なくとも、目の前の捨て駒に身内を奪わせることが無いように。

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