フリーズドライと『治癒の薬』
フリーズドライは携行食だけでなく、『治癒の薬』にも使えることが分かった。
ポーションを粉薬にできたのだ。
たぶん、プレイヤーがこんな事をするとは想定してなかったため、効果が無くなるという設定にされていなかった事が原因と考えられる。ゲームマスターの想像の埒外だったのであろう。
つまり、『治癒の薬』の粉末化はチートのようなものだ。
これで俺もチートプレイヤーである。……全く嬉しくないし、果てしなくどうでもいいけど。
「まさか、粉にできるとはね」
「無茶苦茶ですのー」
パーティの物資運搬担当のララは、別に『治癒の薬』が瓶詰の液体だろうと紙の包みの粉薬だろうと気にしない。それが≪アイテムボックス≫持ちの強いであるからだ。
しかし新技術には興味を持つ。好奇心に自身の負担とは関係ない。
「ふーん。粉のままだと使えないんですね」
「はい。水で戻す必要があります」
「えー、それじゃあ、いざってときには使えないじゃない。『秘薬丸』モドキ?」
「粉を掛けた後に水を被っても効果があるんですよ。使い方はいろいろあると思います」
イーリスやミレニアも興味深く粉状の『治癒の薬』を見ている。
粉になった事で当たり判定が変化したのか、そのままでは効果が無い粉薬。
しかし、効果が無いなら効果が無いで、使い方を考えればいいという結論になる。
液体に溶かして効果があるのなら、血や汗に溶かしてもいいのではないか? その場合、効果はどのように発揮されるのか? 調べる事は多い。
粉を無理やり飲み込んだ場合は唾に溶けたからか、一応効果があったようである。
そうやって効果を確かめていくのだろう。
他のポーション、解毒用や病気用でも粉薬にできるとなれば、保管の手間がかなり減る。
場所を取ると言う事は、それだけ負担があるという事だ。保管の手間がかからないなら、その方がいいに決まっている。
備蓄を増やした今、省スペースはわりと大事なのだ。
工場ではストッカーという自動搬送システムを使った在庫管理をしていたが、こちらではゴーレムを使って同じものを作ろうとすると、かなり面倒である。
製造だった俺は設計とはあまり縁が無く、CAD、図面制作ソフトも障りの部分しか覚えていない。あれを使うくらいなら、手書きかエクセルで書いた方がマシというレベルである。
そもそもCADどころかPCが無いのでそのあたりはどうでもいいが、こういう時は実績のあるヤマト村の連中に頼めれば楽なんだがなぁ。
何故か敵視されているので、今は頼みごとの一つも出来やしない。まったく、不便な話である。
根っこが感情論で利益の絡まない敵対関係は、解決策が特に無い。
時間が解決してくれればいいんだけど。
無理なんだろうなぁ。




