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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
ポーション問題
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現実逃避

 生き残りたければダンジョンでレベルを上げるしかない。

 生き残りたければダンジョンを攻略するしかない。


 予測・推測で固めた前提条件による推論、つまり妄想一歩手前の話であるが、可能性として否定しきれないなら、備えの一つも必要だろう。



 ただ、まぁ。


 それよりも先に、お薬の備蓄を用意しないとね。

 不測の事態になった時、自分一人の力でどうこうできると思っていない。

 何かあった時に頼れるのは仲間だ。


 だから、その仲間がちゃんと力を振るえるようにしないといけないのだ。





 薬の準備は、開始から2ヶ月でどうにかなった。


 材料の納品は定常通りになったので、外回りの必要はなくなった。

 俺たち兼業錬金術師の投入も必要なくなり、あとは専業の錬金術師たちだけが頑張ればいい。


 『秘薬丸』についてはまだまだ生産していく予定だが、ある程度の数であれば、普段消費する分だけであれば、通常業務の隙間時間だけでも問題ない。



 ちなみに弾蔵はそのまま『北極星』(ウチのギルド)、俺のクランに入ってくれることになった。


 久しぶりの男の仲間である。心から嬉しく思う。

 ……女所帯では、男の肩身が狭いのだ。

 何か言えば俺に従ってくれるとはいえ、プレッシャーだけは無くならないものである。特に、俺の身体が小さいうちは。



 弾蔵はレベルが低いので、メイド3人娘と組んでレベル上げをするように言っておいた。

 週のうち2日は秘薬丸講習会を開かねばならないのでダンジョンに行ける回数は少なめだが、あの3人にはギルド運営の仕事を任せているので、ある意味ちょうどいい。ダンジョンは週に3日、後の2日を休みとして、無理なくレベル上げを進めてもらう事にした。


 片手間ではレベル差はなかなか縮まらないだろうから、講習会が必要なくなったらブートキャンプにでも連れて行くとしよう。





「さて、と」


 薬の在庫やギルド内のあれこれを確認し終えた俺は、次の事を考える。


 冒険者にとって、武器と防具、薬品関係という装備品を揃えるのは常識だ。

 あとは水や食糧などを持っていく訳だが、そちら側にはほとんど手を付けてこなかった。

 どうせなので、携行食関係も強化したいと思う。


「拙者の丸薬には、糧食関係のもありますぞ」

「いや、それは要らない」


 携行性に優れ、栄養価の高い物があると、何かと便利だと思う訳だ。冒険者用の固形食糧も存在するが、ぶっちゃけ不味い。


 ぱっと思いつくのは缶詰や乾パンである。あとはカレー粉。

 知識チート系の話ではよく聞く物だが、どうやればいいのかなんて、俺は知らない。下手するとシュールな例の物ができてしまうかもしれないと思う訳だ。アレは一応食べ物らしいが。


 公式チート系鍛冶師のドワーフはこの辺にはいないし、スキルでは缶詰に類するものが無いため、応用が利かない。

 『料理人』のスキルも役に立たない。むしろ時間制限の意味ではさらに悪化する。


「ギルドマスターの仕事に、そんなものも含まれるのですかな?」

「どっちかというと、趣味みたいなものだよ」


 正しくは現実逃避という。

 俺が糧食関係に手を出すのはレベル上げ、つまりハイレベルな戦いを繰り返さなきゃいけない状況に対する逃避行為である。

 当たり前だが、俺は戦闘が好きなわけじゃないのだ。



 逃げる事が正しいわけじゃないけど、それでもやらずにはいられない。

 何か美味しい糧食を考えましょうかね。

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