異変
基本的に、俺はヤマト村の連中と仲が悪い。
だが、馴れ合うことは出来なくてもある程度理性的な対応をされていた。仲の悪い同僚のようなものだ。
それがまぁ、親の仇みたいに睨まれるとはね。
村に来て思ったのは、空気が悪い、だ。
雰囲気が重く、人気が少ない。静まり返っているとまではいかないが、それでも普段と違うようにしか思えなかった。
相川が戦場に出ていたことを考えると、その前のダンジョン攻略は失敗したんだろう。成功したなら帰っているだろうし。
ただ、あれから1ヶ月が経っているわけで、本当にそれだけならここまで空気が悪くなるとは、悪いままとは思えないんだけどね?
それでも実際、今の村の上の連中には余裕が無いようだった。
「今、お前の相手をしている余裕はない。帰れ」
用件を告げる間もなく、追い返された。
俺はギルドマスターだが一平民なので、貴族のように扱えとは言わないが、それでも何も相手をせずに、木石のように扱われるとは思ってもみなかった。一応でもグランフィストの外交官の役を貰っているんだけどね。
だが、なんの予約も入れずに来たのではなく、ちゃんとこの日のいつ頃に行くかを事前に知らせての来訪に、この態度はないだろう。
「事前に話を通し、ルールを守り訪れた客にその態度とは。受け入れが無理なら、使者にそのように言うか、そちらから使者を立てるべきだろうに」
その辺りは俺が言わずとも、一緒に来た文官さんがフォローしてくれる。俺は一歩下がったところで他の人と小声で認識の共通化を図っておくとしよう。
「この間の戦場に相川の姿がありました。彼らはダンジョン攻略に失敗し、気が立っている、余裕がない状態なのでしょう。
もしかしたら最近の攻略で応対予定だった誰か死んでいて、我々への対応が不可能になった可能性もあります。
ここは一度引いた方が良さそうですね」
「そうですね。
ですがこのまま下がれば舐められます。我々が少々強気に振る舞いますので、レッド様から取り成す形でまとめましょう。
宜しくお願いします」
「分かりました」
細かいことは分からないが、自分がさっき言った理由は違う気がした。
連中の俺を見る目が、鋭く禍々しい。
最近は特に交流を持っていなかったはずが、何でこうなったのかと戸惑うぐらいに。
最近あった変化と言えば弾蔵の事ぐらいだが、それでこうなるとは考えにくい。
この場は文官さんたちと連携して立場を取り繕い、そのまま去っていった。
いくら考えても、どうしてあんな態度をとられたかは分からなかった。




