レベルアップ(後)
中途半端よりも尖ったステ構成。
俺の趣味というのが一番の理由だが、将来性を見越せば召喚士の活きる道はこれしかないという気がしているからだ。
汎用性が高いステ構成だと何でもできる代わりに決定打が無くなってしまう。相手のいやがる事、一番苦手とする事を主にやっていけばいいという話になるが、それ、尖った構成でもできるんだよ。
属性縛りと種族縛りの二つを自身に課す気でいるがそれでも得意とする戦法はいくつでも思いつくし、他の仲間を頼る事も視野に入れれば俺が万能を目指す理由は無い。
それに属性縛りをしても風属性の場合は上位属性に『嵐』『雷』『吹雪』の3パターンがあるからな。汎用性が低いわけではない。
特化した場合は種族限定で強化を乗せられるし、召喚時のコストも少なくて済む。
デメリットとメリットを比べればどちらを選ぶべきかは一目瞭然なのである。
という訳で、今回も『ドラゴンパピー(風)』を選択。
最初のジョブを『翼竜』から『撃竜』、≪竜爪≫というスキルを持つ近接物理攻撃特化にする。
二つ目のジョブは変わらず『風竜』だが、魔法タイプではないので≪風の守り≫というスキルで防御を強化。
ドラゴンパピーの場合、生産ジョブは選べないので自動的に『財宝の守護者』になる。
冒険スキルの方も選ばせてもらえないので、あとは名前だけだ。
名付けは本人の目の前でやりたいので、ティナにはいったん帰ってもらって新しい子を召喚する。
「上がティアマトなら下はマルドゥーク? じゃあ『マリー』にするか」
マルローネの愛称がマリーなら、マルドゥークの愛称もマリーでいいじゃない。
そんな誰にするわけでもない言い訳を頭に思い浮かべながら名前を決めた。
ティナよりも少し大きめの身体で、少し小さな翼を持った緑のドラゴン。
飛べることは飛べるけど、ステータスを見ればややSTRが高くAGIが低めなので空戦はティナに劣るのかな。総合力は経験値で負けているので気にしない。
うん、“今は”まぁこんなものだろう。
将来性を見ればかなりの戦力に育つはずだし。
マリーの頭を撫でながら、そんな事を考えていた。
その後はティナや他のメンバーの経験値割り振りを行い、パーティを全体的に強化した。
ティナはより素早くなるように、桜花は魔法特化型を目指し、メイドトリオはHPを伸ばしスキルを底上げした。
その後も探索を続け、休憩を含め5時間で探索を切り上げた。『花園』から1つエリアを進んでみただけである。
MPに不安がありどうにも落ち着かなかったのと、次のエリアで他の冒険者とかち合い、探索するメリットを潰されてしまったからだ。探索済みのエリアにある残り物を狙うなど、期待するより儲からない事の方が多い。今回の探索は一応黒字なので、無理を通す必要が無いのも帰る理由だろう。
帰りはモンスターや他の冒険者と出くわすことなく、4時間で出口までたどり着いた。
現状、実戦は1日1回しかやっていないので、いずれは連戦できるよう、今のうちに慣らしておきたいものだ。
でも連戦はMP残量などに不安が残るから、出来るだけやりたくないのも本音なわけで。
もう少しこのままで、そんなチキンな事を考えてしまうのであった。




