残った疑問
リアルとゲームは全く違う。
ゲームでは「序盤は敵が弱く、終盤で強敵と戦う」のが当たり前だ。それは戦略系SLGなども例外ではなく、いかに終盤まで気分をたるませずに楽しませるかを考えているからであり、序盤はチュートリアル扱い、終盤はキャラクター、ユニットの成長を感じさせるためでもある。
つまり、序盤はノリと勢いとなんとなくでやっても全く問題が無い。中盤あたりに取り返しのつかない選択肢を用意することはあっても、序盤で致命的な問題を起こさせることが珍しい仕様になっていることがほとんどである。
逆にリアルの戦争は、序盤が全てを決めるといっても過言ではない。
互いにすべての手札を揃えた状態で始まるのがリアルな戦争なので、時間経過は国力や兵力の差がジリジリと表に出てきて、手札を増やすようなことは滅多にない。
強いて例外を挙げれば第3国の援軍ぐらいで、押された戦時中の兵器開発が戦局を打破するという事はまずありえない。
序盤に敗戦を重ねれば、戦況はもうひっくりかえらないと思って間違いない。
よって、独立勢力との戦争はもう片が付いた。戦後処理だと思っていい。
火の都や水の都は穀物生産に向いていない。こちらが食を司る大地の都を押さえたのだ。しばらくは運び込んだ穀物も持つだろうが、時間が経てば経つほど食糧は消費され、何もできなくなるだろう。
独立宣言、それによる反乱は完全に失敗したと思っていい。
よって残る都市には大地の都の陥落を喧伝し、降伏勧告が行われる事だろう。
そして彼らはその言葉に従うしかないのだ。
マジックアイテムの回収こそまだだが、主となる戦争が終わったので俺のお仕事も終わりであった。
出番が終わったのでグランフィストに戻る準備を始めている。
俺は徹頭徹尾、戦争そのものの中でも補給以外に関わっておらず、一般に流布している情報しか分からないでいる。
だから友軍にほぼ被害が出ない状態だったとか、相川らが活躍したとか、国にとって都合が良かったり隠しきれ無さそうな情報以外は回ってこない。力のある貴族相手に伝手も作れなかったので、情報収集の手段が無いのだ。
だからどうしても気になる点が一つ。
なんで、独立は失敗したんだろう?
当たり前だが、独立勢力は独立が成功することを前提に行動を起こしたはずだ。そうでなければやる意味が無い。
マジックアイテムの入手が目的だったとしても、ダンジョンは3つあり、その全てを攻略しようと考えていたなら相応の時間が必要だ。だったら1年か2年は独立状態を維持する必要があっただろう。その後の事を無視したとしても、ここまであっさりと負けるというのは腑に落ちないというか、理解できない。
事前情報の収集に失敗し、敵戦力の情報を見誤った? 何年も何十年も王国に従属してきた貴族がいたのに?
それとも――予想外の展開があった? 例えば、相川らが直接敵対する《・・・・・・》とか。
相川らとは、実は戦争直前に少しだけ話を聞く機会があった。
相川いわく、
「彼らがあの時私たちを助けていたなら、戦う事は無かっただろうね。
同じ日本人だから戦いにくいんじゃない。同じ日本人だからこそ、あの時助けてくれなかった恨みがある」
言外に俺の事も責めているように感じた。
が、相川の言葉を信用するなら、グランフィストを追い出された時に、救援を求め伸ばした手を払いのけられたことを恨んでいるので戦いたくない相手ではないと言っていた。
理解できない話ではないし、そんな経緯があったなら敵対されても仕方がないと思うのだが、独立勢力が楽観視すれば相川らが出てこないと予測する事も無いとは言い切れない。
結論は、よく分からない、だ。
本気で勝とうとするならもっと打つべき手はあっただろうし、こんな短絡的な手段に頼った段階でそれにはマジ○チさんにしか見えない。
俺が戦争嫌いというのを別にしても、正気の沙汰ではないと思う。
本当に、なんで独立戦争なんて挑んだのかね?




