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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
殲滅戦争
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楽勝

 戦記ものあるあるになるんだけど、少数で大軍に勝とうとする場合は敵の補給路を叩くのが基本になる。

 その為にワザと陣地深くまで侵入させ、補給路を長く伸ばし、どうしても避けきれない隙を作り出すことに勝機を見出すわけだが。


「まぁ、魔法無しの世界の話だな」

「そうですね、マスター。空の上を攻撃する手段などありませんから」


 さすがに時速200㎞で飛ぶドラゴンをどうにかする手段と言うのはそうそう滅多にない。

 同系統のジョブ持ちがいたとしても、同じ速度であれば追いつかれるわけも無く。補給が滞ったことは一度も無い。


 ついでに、補給物資を焼き払う事も出来ない。

 ≪アイテムボックス≫持ちが全部管理しているので、わざわざ見える場所に置く事が無いのだ。



 物資をどうにもできないとなると、相手の焦りを誘うのが難しくなる。

 物資がある以上、士気を下げる手段はあまりない。背水の陣を布かれる事も無いのだが、こちらに心に余裕のある状態では逆に相手が焦ってしまうものだ。戦力比に加え士気でも負けてしまえば、独立勢力の勝ち目など、どこにも無い。


 つまりだ。

 もう、勝利が約束されているのである。





 こうやって大地の都を先ず最初に落とすことで、他2都市への備えが疎かになるのかと言うと、そんな事は無い。

 もともと王都には3都市すべてを同時に出来るだけの戦力があり、グランフィストからの援軍で戦場一つを確実に取りに行っているだけで、そこに油断など無い。強いて言うなら攻め入れるほどの補給路を確保しきれないだけである。


 そして援軍を送り出したグランフィストですら、防衛戦に限るが2都市を同時に迎え撃つぐらいの事が出来る。

 援軍は正規軍ではなく冒険者ばかりのため、兵士は1人も動いていないのだ。



 一切の油断なく、確実に勝つ。

 一つ目の勝利は目前に迫っていた。





 そうこうするうちに戦場は大地の都周辺まで進み、決戦間近という運びとなった。


「あと3日で大地の都は解放されるぞ!」


 エンデュミオンは物資を渡しに来た俺にそう宣言してみせる。

 ここまでの戦いで敵兵力を吸収したり撃破したりで、総戦力比は10:1でこちら有利というところまで敵を追い込んだ。


 そこでサミスタ伯爵は都に対し降伏勧告を行い、開城を迫っている。

 無血開城と言わないのは奪われたマジックアイテムに加え首謀者である日本人の首を物理的な意味で差し出すのが条件だからだ。ちょっとは血が流れるのである。それで独立などと言いだした反逆者たちを許すというのだ。


 人死にが出るとはいえ、それでも被害を最小限に抑えようと努力しているわけであり、かなりの温情措置となる。

 下手をすれば支配者層の刷新(さっしん)ならぬ殺新が行われるべき場面である。踊らされた連中を助けるというのは、ある意味非常識とも言える。

 俺ならまず間違いなく、そいつらの首も対価にしただろうな。それでも平民らは動くだろ。馴染みがある分、日本人よりも恨まれているだろうし。



 降伏の期限があと2日で、それが駄目なら攻城戦となる。

 エンデュミオンの言う3日とは、交渉決裂後の交戦が予想されているからだ。残った連中がこちらの言葉を信用せず、生き残るために抗うと決めたところで不思議は無い。だが。


「死にたくない奴なら、間違いなく降伏するんじゃないでしょうか?」

「はっはっは! 理性で考えるようでは戦場では生き残れんぞ! 戦場は理性ではなく狂気とむき出しの感情がぶつかり合う場所! 死にたくないと言う奴は常に手ごわいのだ!!」


 エンデュミオンは小声で「それに」と付け加えた。


「サミスタの小僧の身内は、幼かった弟妹も含めすべて市民の私刑(リンチ)で殺されている。平民にしても、あ奴を信じきるのは難しいだろうな」

「なんでそんな情報を聞かせますかねー」

「サービスである!!」


 そんなサービス、要らないです。

 その台詞を直接口にはしなかったけど、肩を落として落ち込んだところを見せてみた。

 すると背中をバンバンと強く叩かれ、、あまりの痛みに脱兎のごとく逃げる羽目になった。



 脳筋め。

 そう言いたかったが、戦場での経験値はエンデュミオンの方がよほど上である。

 記憶の片隅にでもいておくのが正しいだろな。

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