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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
殲滅戦争
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楽勝ムード④

 こうして俺は『倉庫番』の人達と物資運送を続けていくのだが、窓口のエンデュミオン氏は最初こそ威勢が良かったが、徐々に、徐々に元気をなくしていった。


「おお、レッドか。で、今日も頼むな」


 声に張りが無く、最初に見た時ほど体も大きく見えない。

 身長が縮んだのではなく、纏っていた覇気が感じられないからだ。10日目にして、既に別人である。



 戦争の方は、圧勝ムードだ。

 敵の罠を警戒し、一気に大地の都まで軍を進める事をしていない。周辺の町や村を先に全て確保し、孤立させてしまうつもりだからだ。

 上手くいけば日本人勢力を戦犯としてしまうことで恩赦を約束し、無血開城で勝利する事も出来るだろう。


 なのに、エンデュミオン氏は元気が無い。



「ははは。我が輩は王国最強の騎士を自認していたが、それもこの戦までの事。もう、我が輩は最強ではなくなってしまった……。

 ジョンやバランはまだ良かったが、あの、アイカワという男達は何なのだ……。まるで勝てる気がせん」


 原因は傭兵枠で参戦したヤマト村ご一行の様だ。

 どうやら彼らはとても活躍しているらしい。



 これは推測だが、あまり信用できないヤマト村ご一行は敵戦力の厚い、危険な戦場に立たされたのだろう。


 本来であればそういった役目は目の前のエンデュミオン氏が受け持つのだが、彼を予備戦力に回してまで相川たちを死地に送り、信用できるかどうかを試した。

 結果としては相手の戦力を食い潰すほどの活躍を見せ、そのまま先鋒など戦う機会が多い場所に回された。

 その全てを勝利した結果、エンデュミオン氏が気落ちする事になった。もしかしたら、軽く一騎打ち(直接ボロ負け)でもしているかもしれないね。



 俺はティナ達を含めても最強を自認できるタイプではないし、召喚アリの一騎打ちですらジョンやバランに勝てない事を知っている。

 相川達は、あれは別格だ。そろそろダンジョンを攻略しかねない連中となんて比較する気も無い。それこそ大人と子供ほどの差がある。


 なので、少しだけアドバイスすることにした。


「なら、この戦争が終わったら特訓ですね」

「特訓、か。そんな事にどれだけの意味があるというのだ? 我が輩は、我が輩は……っ」

「あの強さを得ようと思ったら、ダンジョンで死ぬ気でやれば、1年もあれば十分に追いつけますよ」

「何!?」

「実際、彼らは2年と少しであれだけの力を得ました。元は素人同然のレベル3からです。

 3つのジョブの影響もありますけど、誰もが同じレベルまで強くなるだけなら可能です。時に努力は人を裏切りますけど、努力した分だけ強くなれるのは間違いないですし。

 もしも必要でしたら、俺達も手を貸します」


 地球にいた頃は、努力が報われるとは限らなかった。

 成長には才能が必要だし、努力が実るかどうかも賭けだった。


 しかし、少なくともこの世界なら経験値稼ぎに一定の法則があり、レベル上げには才能など関係ない。強いて言うなら、レベルを上げようとする覚悟が才能だと思う。

 全ては心の持ちようなのだ。





 俺の言葉に心を動かされたのか、それともダンジョンに行くという発想が無かっただけなのか。エンデュミオン氏は何とか持ち直したようだ。背筋が伸び、心に芯が通った様に目の輝きを取り戻す。


「やはり実戦が足りなかっただけであるな! うむ、一度自分を鍛え直すため、戦が終わればダンジョンに向かうとしよう!

 陛下の許可をもぎ取った暁にはよろしく頼むぞ、レッド!!」


 よし。コネ、ゲット。

 脳筋系かなと思ったわけだが、氏は思った以上に単純だったようだ。


 今回の戦争でその名声はやや力を失っただろうが、それでも国の英雄と縁を結ぶことには意味がある。

 俺は晴れ晴れとした気分で王都に戻るのだた。

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