楽勝ムード③
初仕事では、こちらの用意した『倉庫番』3人を含む6人の運搬役を運ぶことになった。
これにこちらから桜花とイーリス、あちらの用意した監視役でつなぎ役な騎士さんが1人。
ここに俺を加えて計10人が戦場を目指す。
「大丈夫、私は大丈夫……」
「落ちない、落ちないんだから死にません! ええ、落ちないんです!」
「しつこいよ、君たち」
空を飛ぶ前にはちょっとくどくないかと思いたくなる一幕があったが、王都の王国軍と独立勢力の戦う戦場まで1時間もかからずに到着した。
風を切って飛ぶのは気持ちが良いと思うのだが、振り返ってみれば死屍累々。桜花やイーリスはもう3回目なんだし、そろそろ慣れてきてもいいと思うんだけどね?
銀地に金の獅子と剣を刺繍された王国旗を目印に降り立った友軍陣地は、今日も勝利の美酒に酔いしれていた。
「おお、よく来た!!」
「お久し……ぶり、です。閣下…………」
「おい、大丈夫か? 水を持ってこさせるか?」
俺たちの姿に気が付いた将兵たちの中から、一際大柄な男がこちらにやってきた。
フレンドリーに声をかけてくれるが、それが誰だか分かる唯一の騎士様は空の旅の後遺症でグロッキーである。推定将軍様が思わず心配するほどに。
10分ほど休憩を頂き、それから物資の受け渡しを行う。
「うむ! 飯も酒も十二分にあるな! 装備の補給も万全であるし、次の戦いもこれで勝利は間違いない!!」
エンデュミオン。
このデカい人が俺達の交渉の窓口らしい。
身長2mオーバー。
人外かと言いたくなるこの男こそ、王国軍で最強の男らしい。役割が突撃隊長なので要職ではないけど、軍の重要人物らしいね。
見た目も性格も豪放磊落、猪武者っぽいけど、見た目からして強そうな雰囲気である。
ただし、俺の見立てではレベル15ぐらい。俺と同格といった強さで、グランフィストだと上の下にしか成れなさそうだ。
相川らがレベル21かそこらで、奴らが最強なのは間違いない。冒険者ギルドではジョンのパーティがとかがレベル18や19だったので、それが上の中。
正直、がっかりしている俺がいる。
これが王国軍最強なのかと、少しテンションが下がってしまった。
イーリスなら、たぶん勝てそうなんだよな。ギリギリにはなると思うけど、勝てないとは思えない。
そう思うと有名人に会ったという気がしないのがとても残念だ。
彼はこっちの勝手な思考には気が付かず、全ての物資の受け渡しが終わると「ではさらばだ!」と言い残して去っていった。
俺達はお付きの騎士に言われて早々に陣地から王都へと戻る。
俺の仕事は毎日あるので、この、地に倒れ伏す仲間たちが何回目で耐性を得るのかなと、どうでもいい事を考えていた。
むしろ、何回目に仕事が終わるのかなと現実逃避したくなっていたけど。
それを考えたらきっと鬱になる気がする。