楽勝ムード②
軍務卿と言われる役職についているのが、今回の討伐部隊の指揮官らしい。
彼の旗の絵柄を覚えるように言われたが、どうやらそれを目印にするらしい。まぁ、どこに誰がいるかなんて空の上からじゃ分からないからな。旗で識別するのが正しいだろう。
念のためと言う事で最初とあと数回は軍務卿派閥の人が付いて来てくれる。その数回で顔つなぎをして、あとは自分でやれよと。
思ったよりもしっかりしていてよかった。もしこれでいきなり「この旗を目印に~」とか言われ放り出されたら、下手すると敵の偽装にやられる可能性があったからな。それでも騙される可能性はあるんだけど、友軍と顔見知りの奴が付いて来てくれるなら大丈夫だろう。
もっとも、その後も仕事ぶりを評価する役目の人は付いてくるので、いざとなったらその人に任せてしまってもいいんだけどね。
仕事を教えてくれる事務員さんと話をしていて、「そう言えば」程度にサミスタ伯爵の事を思い出す。
釣れない態度を取られはしたが、あの人なら味方に近い立場になってくれるだろうと考え、「仕事とは関係ない話ですが」と切り出し、話を聞いてみる事にした。
「サミスタ伯爵ですか。……あの人が“元”大地の都の領主です。今回の騒動の為に伯爵とはなっていますが、本来ならあの方は侯爵なんですよね」
おお? 意外過ぎる話が出た。
「反日本人勢力の旗手でもありますから、レッド様とは距離を置かれてょうが良いでしょう」
……ついでに嫌な話が出たよ?
しかし日本人に追い出された元領主なら、その話も仕方が無いな。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いって言うし、それで日本人とは仲良くすべきだなんて言いだしたらどこの阿呆かと。
あれだな。最初はしがらみも何も無い日本人を重用して都市を上手く回していたら、いつの間にか独自勢力となって自分に刃向った。だからやっぱり同じ王国の人間じゃないと信用できないとか、そういうことを言い出した。そんな流れだろう。
土地に長く根付いた組織ってとても面倒だからな。楽な方に逃げたら落とし穴があった訳だろ。仕事は楽をできないと気が付けなかった段階でアウトな人だな。今は身を持って理解しただろうけど、今度は逆にその場から全く動かないような、極端から極端に走っているのだろう。
そんな彼は、最前線で相手の士気を挫く作戦を行っているらしい。
領主だった彼が「貴様らは捨て石にされている!」と言うだけでそこそこの兵が離脱するだろうし。楽に勝てるならそれに越した事はないのだ。人的被害は結局自分に返ってくるしね。
事務員さんから王都の簡単な情勢なども聞き、簡単な人間関係を教えてもらった。
今回の件で日本人危険説を説く貴族が大勢出たが、それでも日本人有用説の方が王都では主流。
ジョブ解放の事もあるし、グランフィストはそんなに大きな問題になっていないし、すでに王都でかなりの数を雇っているし、何より神様から送り込まれたってのもある。
問題が起きたのは現地の連中、領主に問題があったと見る動きの方が強いようだ。
これは王都住まいの人でもあまり知られていない話だが、ジョブ解放は片親が現地人だと遺伝子ないことが分かっている。両親が日本人だと遺伝するらしい。
王都に来た日本人の何組かが王都在住の誰かと結婚して子供ができた時に確認された数件の事例なので信憑性は不十分だが、今後、正しく証明されるだろう。
なお、両親が日本人かどうかに限らず、この新しい世代がジョブ解放できるかどうかは流石にまだ分からない。
今更ジョブ解放の利益を捨てるのは勿体無い。
他国のダンジョンにも日本人はいるらしいので、ジョブ解放できる日本人が居ないと不安。
この世界に奴隷の首輪のようなアイテムは無いけど、嫌な話を聞いた気がするよ。




