レベルアップ(前)
ハーピーは今の俺たちにとって、わりと相性のいい敵だったようである。
被害が無いし、逃げられないと思ったのか逃走もされていない。
初戦を完全勝利で飾ったティナも機嫌が良さそうに鳴いている。
ハーピーの剥ぎ取り素材は羽根である。ほんの少し魔力を帯びているらしく、浮遊系のアイテムや軽量化の魔法付与に使うらしい。
あと、光物が好きというカラスのような特性があるため、小銭もゲットした。
戦闘後は周辺で採取をしようとあたりを調べてみると、治癒薬に使える薬草、『治癒草』というそのまんまのネーミングの野草が生えていた。
葉っぱが治癒薬の材料になり、根っこが≪薬膳≫に使えるので、根こそぎ頂いた。
ダンジョン内の薬草類は植生が替わる勢いで採取し尽くしても問題ないという話なので、遠慮しない。手に入るだけ採取し尽くした。
『花園』エリアで戦闘は圧勝、剥ぎ取りや採取で収入もあった。
だが、全く問題が無いわけでもない。
それは俺の魔力で、ティナの全力戦闘に伴いMPが半減してしまったのである。
桜花のMPも俺が賄っているため、MP消費はさらに厳しくなる。
ティナや桜花の魔法は強いのだが、その分燃費がよろしくない。もっとレベルとMPを上げて俺の継戦能力を高める必要があるな。
今後、もし強敵が現れたら、ティナの戦闘時間が足りず勝てないかもしれないし。
≪薬膳≫と≪調理≫スキルの効果で回復すればいいと思われるかもしれないが、食事によるブーストや回復は1日1回だけなので、今日はもう頼れない。朝一で桜花たち4人に魔力を与えていたので、その減少分を回復させるために使用済みなのだ。
このへんは資金さえあれば簡単に数を増やせる『人形遣い』ジョブの制限として設定されているだけに、かなり厄介である。
魔力回復薬も市場に出回っているが、お一つ1000Gと赤字覚悟のお値段である。
そして回復量はたったの3点。
他にも高レベルになると宿屋でゆっくり寝てもMPが全快しないなど、『七鍵世界TRPG』は魔法使いに優しくない仕様なのだ。
ダンジョン内でもゆっくり寝れば1時間でMP2~3点回復する。
時間が勿体無いかもしれないが、意地を張り無理をして死んでしまっては元も子もない。少し早いが昼飯を食べ、ゆっくり休んでから探索を再開すべきだろう。
俺たちは木陰に陣取り、休憩することにした。
木陰での食事を終えると、そのままゆっくり休憩と言いたいが、それよりも経験値による成長処理を先に済ませたい。
ハーピー7体の合計レベルは俺たちの18レベルと大差なかったようで、戦闘後に1点の経験値を得ていたのである。
俺の経験値はこれで2点目。召喚士のレベルが2に上がる。
≪召喚術≫のレベルも自動で上がり、次の召喚モンスターを選べるようになった。
思わず悩んでしまう次の召喚モンスターだが、悩む理由はとても多い。なぜなら選ぶモンスターは今後の戦力増強、そして俺が目指す召喚士としてのスタイルまで考慮する必要があるからだ。
細かく言うと、『七鍵世界TRPG』における重要な要素、ジョブのランクアップに関わる条件が選択してきたスキルに依存するからである。
ドラゴン特化の『竜召喚士』か、汎用性の高い『幻獣召喚士』か。
まぁ、訓練中にさんざん悩んだので結論は出ているのだが。