異世界の戦争③
ようやく連中の狙いが分かった。
お宝がある事を知っていたがどこにあるか分からなかったので、分かる位置に持ってこさせたという事だろう。
なんでお宝を欲しがったのか、そもそも基になる情報をどこから手に入れたとかは分からないけど、狙いは国宝級のマジックアイテムだったのだろう。
……非常に迂遠であまり意味が無い事のようにしか思えないのは、俺がご当地ダンジョンの難易度を肌で感じていないからだろう。
彼らはマジックアイテムが欲しい。
王都の貴族は日本人にマジックアイテムを貸し出す・譲る理由が無い。
だから力づくという訳だ。
それも、多くの人を巻き込んで。
このままなら、開戦待ったなしになったね。
少なくとも、マジックアイテムを奪い返すまでは何ともならないし、奪い返した後も面子の問題で酷い事になるだろう。
非常に迷惑な話だが、理解できない事も無い。
こちら側に強制的につれてこられた日本人にしてみればダンジョン攻略は悲願であり、絶対に自分が生きているうちに成し遂げる必要のある、最優先事項だろうからだ。
そして酷い話だが、べつにこちらの人間がどうなろうが、日本に帰る者にしてみれば考慮に値する話ではない。
相川たちも似た様なものだが、この世界で生きていこうとする気が無い者にしてみれば、この世界などどうでもいいのだ。
きっと残された日本人たちはそんな連中の同類として肩身が狭い状態で生きていくことになるだろう。
そんな残された者にしてみればたまったものではないが、それを言ってどうにかなるほど世の中は甘くない。不条理ではあるが、そういうものだと受け入れていくしかないだろう。
逆に王都側に付いて必死に頑張れば、ちょっとぐらいは状況が改善するかもしれない。
俺は絶対にやらないけど、白眼視される中でも自分が敵じゃないとアピールすることは無意味ではないだろう。
俺がそういった事に興味を示さないのは、すでにちゃんとした仲間がいるからなんだけどね。こっちで婚約者もできたし。
日本人連中とは縁切りしていた期間があるのも有利に働いている。
ただ、ヤマト村の連中は結構立場が悪くなったね。
領主サマは基本的に中立よりやや味方よりの対応をしているけど、部下の方は上手く手綱を取りきれていない。反日本人な奴もそこそこいる。
今でこそ領主の難しい立場も分かるし、かつて日本人を追い出したのも半分は温情だったのが分かるけど、完全に身内や味方とする事が出来ない訳で。文化交流はやや下火になりつつある。
街の人の噂では、「日本人は凶悪だ」だという風潮ができつつある。
風化しつつあったはずの以前の話を持ち出し、日本人を警戒対象にしたようなのだ。
独立した直後はまだよかったのだが、その目的がマジックアイテムと分かると「こんな事のために独立騒動を起こしたのか」って意見が無視できない早さで広まってしまったのだ。
なんか意図的な早さを感じたけど、街の方はそんな感じ。
面倒なことになるかな?
そんな風に思いつつ、俺はそろそろ日常に、ダンジョン攻略やレベリングに戻る事にしたのだった。




