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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
独立戦争
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異世界の戦争②

 地球の戦争なら、数を揃え質を高め、良い武具を装備させた方が有利になる。食料や水などを用意するのも当たり前だ。

 あとは戦術の勝負になるけど、アレは奇策の類がほとんどになると思う。やはり地力での勝負が戦争では勝敗の9割を決めると思う。歴史小説などの物語で寡兵が大軍を下すのは爽快感があるが、俺には現実的な話と思えない。


 剣などの武器は手入れをしなくては血糊で切れなくなるし、鎧だって体との間に砂などの異物がどんどん紛れ込んで動きを阻害する。長い時間戦い続けるのは難しい。1人が大勢を相手にするのは当たり前だが背後をとられて終わるだけだろう。人間の目は背中についてないのだ。


 だが、この世界ならそれを覆す手段が多くある。

 スキルや魔法を駆使すれば、回復系のマジックアイテムがあれば、常識の範疇に収まらないのではないだろうか?



「そんな事はありませんよ。条件が互角になるので、数・質・装備の重要性はそのままです」

「相当レベル差があれば確かに覆せるように見えますですのー。でもー、結局はMPが尽きて終わりですの」

「私たちも戦争なんて知りませんけどね」

「ここだとけっこう前に盗賊団を潰しに往ったのが最後じゃないですか? 戦争って規模かどうかは知りませんけど」


 クラン内で戦争について聞いてみるが、彼女らの言葉は俺の予想とはあまり似ていなく、どちらかと言えば兵種が増えただけで、結局は地球のそれに近くなるという結論だった。


 ただし戦争に参加したことがあるメンバーはいない。

 今回の内乱すら相当珍しく、他国との戦争に至ってはここ100年は無いらしい。



 経験値や資源的に美味しいダンジョンを放置するものかと思うのだが、他の国はこの王国ほど兵士の質が良くないのだ。ダンジョンによって高くなった兵士の質を恐れ、挑まれる事は無いらしい。

 そうなると逆に王国が他国に進出する未来が見えるのだが、他国に隣接しているのは火の都方面のみ。あとは大地の都の先にある海を渡らないといけない。


 火の都方面は砂漠であり、当たり前だが支配者にとって美味しい土地ではなく、むしろ負担だ。

 つまり、攻め入る先が無い。

 戦功が欲しい連中にはつまらない話だが、攻め取った土地と言う名の負債を押し付けられるのは誰って嫌なのだ。今の国境は「王国にとって利益のある土地」全てを確保した状態とも言える。


 ごくまれにそんな事も気にせず攻め入って勝利する馬鹿もいるようだが、ロクに町を維持できず、結局放棄して元通りになるのが慣例らしい。馬鹿すぎて泣けてくるね。





 こうやって話を聞いていると、独立そのもののメリットが分からなくなる。

 確かにお山の大将にはなれるけど、周辺にいい感じに制服できる国家が無い様に見えるし。大地の都ぐらい? 海の向こうにすべてを賭けることになるので美味しいとは言い難い気もするんだけど。

 王様に成れればそれ以上は目指さないのか? 王様になりたい、その一念だけでここまでできるか? 付き従っている連中は何を考えている?

 俺には理解し難い考えだ。



 俺はどちらかと言えばネット小説で良く見かける主人公タイプの人間だと思う。

 派手に目立たず、そこそこ自由な立場でそこそこに人生を謳歌したい種類の人間である。間違っても国王なんて組織の(奴隷)などやりたいとは思わない。責任など面倒としか思わないからだ。


 もっとも、俺はどこぞの主人公のように無闇矢鱈と人助けをする事など無いがな。「やれやれ」「しょうがない」と言いつつ楽しそうに揉め事に関わるなど、俺のキャラじゃないので主人公属性は無理だ。



 もちろんそんな自分が多数派とは思わない。

 普通の人はもっと良い生活をと愚痴を口にしつつ上を向いて口を開けるものだからだ。「自分はもっと評価されるべきに」などと口にしつつ努力もせずにラッキーか何かで上に行くのを待つものだ。上に行った先で何を考えるのかは横に置き。

 そして中には人間はどこまでも上の生活を求めるのもいるだろうし、その為に努力を惜しまない、他者を蹴り落とすことに躊躇しないのも混じってくる。


 独立を宣言した連中はきっと他者を蹴り落とすことに躊躇せず、どこまでも上を目指すタイプなんだろうか?





 俺の疑問は、独立から3ヶ月ぐらい経ったところで回答を得る。


 王都にいる勇者的な連中。

 彼らの伝説級な装備品が奪われたという報告を聞くことで。

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