異世界の戦争①
他の都市のダンジョンの情報を集めて思ったのは、食料供給関連。
穀物系は大地の都市に頼っている面があるものの、動物性たんぱく質に関してはどの都市も問題なさそうに見える。野菜はどうなんだろうね?
逆の見方をすると、王都はヤバいんじゃないかと思う。
大地の都市からの輸入が無くなると、穀物関連の値上がりは避けられない。酒にする分を回しても足りるかな? まぁ、俺が考える事じゃないか。
……考えておかないと、何かあった時に怖いんだけどね。備えは大事だよ。
ただ、食糧関係に問題があるなら、本当にすぐに戦争になるかもしれない。
戦争は食糧を大量に必要とするからね、余力があるうちに動かないと「食糧が無いから戦争できません」になる。その前に動く可能性が否定できない。
ラノベでよく見た設定だけど、ダンジョンで食糧が手に入るってホントにチートだよな。それだけで戦争における最大の問題が解決するんだから。
もう一つの問題、装備関連は金属の入手が容易なグランフィストが一強状態だけど、それでも十分チートなんだよな。普通の国なら地面を掘って鉱石を入手し、精錬してようやく使えるようにするんだから。
どうでもいいけど、なんで鉱石って山に洞窟のような坑道を掘って手に入れるのが普通みたいな誤解が蔓延しているんだろうね?
普通は平地に大穴を空ける露天掘りだろ?
「王都の近くって、水資源が豊富だから農業も盛んですよ」
「そうそう。それが理由で戦争になる事は無いですの。ララが保証しますのー」
「腐っても王都って事かー」
特に情報が無かった王都周辺については、イーリスやララが詳しかった。
2人とも俺に感化されたというか、俺が情報収集をしているから気を利かせてくれたのか、商人などから王都の情報を集めていてくれたようだ。
貴族関係の情報は賛美ばかりでロクなものが無かったようだが、税が余分にかけられるような事態になっていない事もあり、思ったより大きな混乱は起きていないようだ。
今の混乱も時間が経てば収束するレベルであり、王都の運営には影響が無い。商業的に考えれば仕入れ先の変更や一部特産品、嗜好品が入手できなくなることが問題と言うレベル?
これでグランフィストが独立運動を起こしていればそうも言ってられなかった様だが、1都市でもダンジョン持ちの大都市がある事で王国の屋台骨は守られているようだ。
グランフィストの連中が動かなかったのはワザと事態が深刻化しないことを狙ったとも考えられるけどね、急に戦争になる事は無さそうなのでほっとした。
まぁ、独立を宣言した日本人連中だって戦争にならない保証と言うか戦争回避の方法が無ければ独立なんて派手な事をせず、実利だけで我慢しただろうけどね。流石に戦争を望んでこんな事をしたとは思いたくない。「絶対に勝てる」「自分だけは死なない」なんて妄想を抱くほど甘くないだろ。
逆に独立した都市の連中が侵攻する可能性はどの程度だろうか? 王都側ではなく、独立勢力が王国に攻撃を仕掛ける可能性は絶対に無いのか?
戦力比で言えば王都側がやや多めのはず。質の方は知らないけど、たぶん独立側の方が上なんじゃないかなぁ。ダンジョンで鍛えられるし。
「マスター、その場合は兵力が足りないと推測されます」
「でもなぁ。小説なんかでは少数精鋭による電撃作戦ってかなり有効って感じに書かれているんだよ。実際、≪アイテムボックス≫持ちと数人のレベル20オーバーがいれば相当ひどい事が出来るよ。城を壊すぐらいなら簡単じゃない?」
ゲーム中の設定でもレベル20と言えば英雄クラス。半分人外の性能を持つと言われるほどだ。
そしてダンジョンがあればそのレベル20オーバーを量産できる。2年3年はかかるだろうけど、兵士を鍛える期間で言えば普通であり、精鋭を鍛えるって意味では相当短い。
そう考えると、戦争へのハードルがかなり低いと思うんだよな。
大魔法をぶっ放せる人間を何十人と揃えたら、パワーバランスがどう壊れるんだろうって思うよ。
下手に大人数で戦うより、よっぽど有効だと思うんだ。
そう言えばこの世界の戦争ってどうやるんだ?
魔法やスキルがある以上、地球のそれと同じになるって事は無いよな。
よくよく考えてみれば、まずはそこからなんだよなー。