王都散策⑥
ゆっくりと観察してみた王都は、寂れていた。シャッター商店街のごとく閉まっている店がほとんどで、開いている店を探すのが難しい。
この状況、理由は簡単に推測できる。
戦争のせいで物流が止まっているからだ。
もともと王都は4大都市の中継地点として栄えることを前提としており、4大都市のうち3つから物が来なくなれば、それは簡単に干上がる事だろう。
付け加えるなら、人も来ないのだろう。戦争が始まったとはいえいきなり物が無くなり店員がいなくなる訳では無い。なのに店が閉まっていると言う事は、店を開けるはずの店員、商人がもともと他の都市の商人で、必要に応じて店舗が貸し出されるとかそういったやり方をしているのかもしれない。
まぁ、この状況が王都にとって致命的だろうことは簡単に想像がつく。
長く続けば人心が離れるし、何より民衆だけでなく貴族ですら生活できなくなる。早急に対応することが求められる。
ただ、そこまで独立都市が独立状態を維持できるのかという疑問もあるけど。
俺たち日本人はこの世界の一般市民と比べれば高度な教育を受けているけど、別にこの世界の政治に詳しいわけでもなければ、日本で政治家だったわけでもない。いや、政治家もいるかもしれないけど、それが多数と言う事はないだろう。
要は、頭になる奴が足りないんじゃないかと思っている。
現地の専門家を仲間に引き込めていれば“多少は”続くだろうけど、長くは持たないと思う。
いつの世も革命は簡単だが、治世を維持するのは難しいのだ。
ロクに出来そうもない買い物を諦め、夕方ごろに酒場に顔を出してみれば、酒を飲んでいる奴も少なかった。
グランフィストならこの時間は仕事が終わった連中がよく酒を飲んでいる時間だったのだが、店の席は半分も埋まっていない。店選びに失敗したと言う事は無いと信じたいのだが。
「マスター、ご飯は美味しいですよ」
「そうね。お酒も美味しいわ」
「みんな締り屋さんなんですのー」
出される物を考えれば、ララの発言が正解だろう。物不足で不景気だから、財布の紐が固く結ばれているという訳だ。
「お代は55Gだよ」
ついでに、物価の上昇も影響しているようだ。
酒アリとはいえ、4人の夕食代としてはあり得ないぐらい高くついた。グランフィストならこの半分で大丈夫だったはずだ。
戦時下と考えれば、これでもまだマシなんだろうけど。
下手すると物資が国に統制されて飲食店は全部閉められるからな。
どこも人がいない為、ろくに情報収集ができずに王都での1日は終わった。
はっきり言って無駄足、徒労に終わってしまった。
「ねぇ、王都まで来た意味ってあったの?」
「……無かったねぇ」
イーリスのツッコミに反論できず。
俺はサミスタ伯爵との出会いぐらいしか成果らしい成果がないことに落ち込むこのになるのだった。