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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
独立戦争
160/320

王都散策①

「これが王都か。広さはともかく、グランフィストの方がよっぽど発展しているように見えるんだけどなー?」

「……」


 俺は今、王都上空にいる。

 王都からの召喚状は無視しているけど、今後何があるか分からないので、余裕のあるうちに王都を見ておく事にしたのだ。

 人間、備えは大事だ。空から街並みや地形を確認するだけでもきっと助けになるだろう。


 ダンジョンの探索をお休みしてまでここに来たので、たった2泊の予定だから時間を無駄にせず、有意義なものにしたいものだ。


「……」

「さっきから全然喋らないけど、みんな、大丈夫?」


 ここまで来るのにティナの背に乗せられていたのだが、同行者3人は一様に口を閉ざしている。目を限界まで見開いているけど、どうしたのだろうか?


「桜花? ララ? イーリス?」

「マスタァァーー!? 怖かったです! 怖かったです!!」

「死ぬかと思ったのですよー!?」

「……」

「ちょ!? お前ら!!」


 何故か固まってしまった3人に声をかけると、再起動した2人に肩を掴まれガクガクと揺さぶられる。

 イーリスだけは声をかけてもそのままである。目を開いているけど、気絶しているようだ。


 時速300㎞の空の旅。

 風防は魔法で用意したけど、手すりや命綱の無い空の旅は、彼女たちの心に深刻な被害を与えたようだ。普段は動揺する事の無い桜花が遠慮なく全力で俺に捉まり、普段なら余裕ぶった顔を見せるララも涙目で俺に八つ当たりをする。

 事前に説明したけど、それでも怖いものは怖かったようだ。


 俺はこういうのが好きだから竜召喚士を選んだんだし、全く気にならないけどね。



 その後、俺たちは再起動したイーリスと4人で地上から歩いて王都入りするのだった。





 王都に来た目的の一部は観光みたいなものである。表向きの目的は観光100%にするので、怪しまれないためにもそのように動く必要がある。

 王都の基本的な「生きた」情報を得ることが目的だが、その為に相手を警戒させるのは得策じゃないからね。こっちの情報は出来るだけ秘匿したい。


 その為に連れてきたのがイーリスで、外見で言えば一番大人っぽい彼女が引率者として振る舞う事になっている。

 桜花は俺の従者みたいなものなので付いてくるのがデフォルト、ララは『料理人』としてMP回復のために強制で連れまわすことになった。細かいことを言うと、イーリスはララをパーティから抜いたのでオマケで付いてきたようなものだ。

 ミレニアのパーティは無事なのでそのままダンジョン探索、俺とイーリスのパーティは残り7人が一時的にパーティを組んで2層で依頼をこなすことになっている。1人多いが、生理休暇でお休みの子がいるから7人でも問題ないのだ。



 王都の地形を確認すること、酒場などで情報を仕入れること、メインの目的はこの2点である。

 商人らから情報を仕入れる事を考えたけど、そっちは余計な人の手が入りそうなので、今回はパス。酒場でランダムに抽出した人からの情報だけで我慢すべきだろう。


 そうそう。ついでに王都の兵士のレベル確認もしておこうと思う。

 今のグランフィストはジョブ解放の事もあってかなりレベルが高くなっているけど、王都がどうなのかは全く分からないし。同じと考えるべきなのかそうでないのか。現地でないと分からない事はきっと多い。

 やっぱり自分の目で見て確認するって大事だよね。



 そんな事を考えつつ、俺は戦争がはじまり不穏な空気に包まれた王都を散策するのだった。

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