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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
独立戦争
159/320

竜召喚士の立場

 『神竜召喚士』の一番の強みはなんだろうか?

 強力なドラゴンを複数使役する事の一番のメリットは?


 ドラゴン固有の戦闘能力だろうか? それともそんなドラゴンを自由に“≪召喚≫できる”ことだろうか?



 人によってさまざまな回答があるだろうが、俺や国が見た時の一番の強みは「超高速移動の手段と成り得ること」となる。


 数いるドラゴンの中でも、風属性のAGIはトップクラスだ。AGI重視のティナの場合、同レベル帯で比する者は存在しない。希少で高価なMP回復アイテムを使えばという前提が付くが、グランフィストと王都ぐらいなら10人運んだとしても1時間で移動可能。その仲に『荷運び』のような≪アイテムボックス≫使いがいれば、かなりの物資運搬が期待できる。

 俺としては大人数を運ぶことを想定してはいないのだが、その重要性ぐらいは簡単に想像が付くし、それだけのことができるという自負がある。

 国にとって囲い込みたい「稀少な」神竜召喚士であることを否定する気は無い。


 俺のやる気の有無は関係ないのだ。





「貴方のような、稀少な能力の持ち主が冒険者などと言う職にいる事がどれだけ大きな損害かを、考えていただけないでしょうか?」

「その冒険者だからこそ、これだけの力を持っていると言えますけどね」


 俺に王都からの召喚状が届いたという話は、変な方向に事態を動かす。


 簡単に行ってしまえば、俺の輸送能力に目を付けた商人たちが大挙して押し寄せるようになったのだ。


 俺の知名度は、意外なほどに低かった。

 日本人と言う存在は希少に見えて、そうでもない。ジョブ解放は俺じゃなくても、他の日本人に頼めばできる事だったからだ。

 むしろ領主ジョブ解放目的でのに接触を禁止されていたことから、商人たちは金や物で取引できたヤマト村の連中の方が身近だ。俺は放置だったわけだ。


 それが今回の召喚状騒動で、なんで俺に召喚状が届いたのかを疑念に思った商人が俺のジョブやスキルを調べ上げ、その有用性に気が付いたというのが事の起こりである。



 冒険者の中で、『神竜召喚士』は言うに及ばず、ただの『竜召喚士』ですら珍しかったりする。

 ドラゴンパピーは確かに強いが、普段使いするには不向きな高コストモンスターであった。よってドラゴンパピーは召喚できるモンスターの中でも1体だけとか、『幻獣召喚士』の切り札的な扱いをされる事がほとんどだった。『竜召喚士』は明確な目的意識が無い場合、普通は選択されないジョブだったのだ。

 国を探せば全くいないとは言わないが、『神竜召喚士』はグランフィストに限定すれば俺一人しかいないのが実情である。特にAGIを武器とする風属性ドラゴンに限定すると、もしかすればこの国の中では俺一人かも知れないほど珍しい。相川の話ではプレイヤー側でも『竜召喚士』は少数派のようだ。


 その俺に目を付け、冒険者では決して稼げない金額で俺を雇おうとする商人が出てくるのは、想定の範囲内である。

 数少ない魔法使い系ジョブの中でも『召喚士』はさらに珍しく、『竜召喚士』側に進む者が滅多にいない事は、兵士たちのジョブ解放で把握済みである。だからこの状況はすでに予測済みだった。



 俺のポリシー、平穏な生活と言うのを考えると、一見すると大商人の雇われはいい立場に見えるかもしれない。

 しかし雇われる側になれば相応に拘束されるし、貴重な、替りの利かない立場になれば酷使もされるだろう。意に沿わない仕事を命じられるかもしれない。ついでに他の商人から命を狙われるのも確定である。それは俺の考える平穏な生活とは程遠い。

 それに、王都からの召喚状も大商人の雇われなら断れなかっただろう。


 なので、大商人からお誘いを受けようとそこそこの生活を維持できる小市民に甘んじておくのが俺の正解だ。

 大金に心を動かされるほど、この世界には俺の欲しいものが無いのも起因している。ラノベの主人公の中には大金を稼ぎ腐れせている奴がいるけど、ああいった連中のような「経済の癌」になる気も無いのだ。日本にいたなら大金の使い道もいくつか思いつくんだけどね。「僕の考えた最高のゲーム」を作らせてみるとか。


 この世界に生きるなら、俺はそこそこの生活ができる今がいいのだ。

 冒険者としては一番ではなく、それでも俺が望む生活レベルを維持し、なおかつそこそこの余裕がある今のような生活が大事なのだ。

 大金を稼ぐ立場など不要と言うか、有害である。





 最近は過大評価をされていると思うけど、こういった引き抜き関連は鬱陶しくてかなわない。

 商人たちには「弟子を育てるぐらいなら構わない」と言ってお引き取り願った。

 彼らには頑張って後進を育ててほしいものである。

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