幕間:神に挑んだ者達
ジョン達が5層に到達した頃。
プレイヤーのパーティが5層をクリアしていた。
「ダンジョンクリアおめでとう。君たちが最速攻略者だよ」
攻略者18人に声をかけるのは、2年と少し前に聞いた神で間違いない。声のトーンにどこか違う印象を受けるが、それでも彼らはあの時の神の声だと確信をもっていた。
どうやって、どのように。
それは全く分からないが、彼らは静かに最後の敵の話を聞く。
「おや?
ああ、そうか。
残念ながら、僕が君たちの前に姿を現すことは無い。そこは諦めて欲しいかな」
彼らの敵意を知ったのだろう。
神は彼らの望みが叶わない事を先に告げた。
「さぁ、報酬の時間だ。君たちの望みを教えてくれ。
制約は僕が出来る事ならそのほとんどを叶えると誓おう。
例外は僕の死を望んだり、王様になりたいといった『枠を消費する』もの、あとは多くの他人を巻き込むものだね。具体的には『ここに連れて来られた日本人の望む物すべてを日本に帰してほしい』といったものかな」
そして、条件の確認。
日本への移動や死者の蘇生すら許すが、基本は望む者1人につき対象は1人まで。特に日本に行きたいと望むなら本人に限る。
山のような金銭や超が付くほど貴重な魔法の武具でもいい。
他にも何か思いつくものがあれば言ってみろと神は言う。
「ならば情報を、真実を寄越せ。“自称”神よ。箱庭で遊ぶクソガキめ」
「日本への帰還を」、そう言おうとする相川だが、彼はまだ口を閉ざす。何を望むのかを決めるにはまだ早い。
相川に代わり、パーティの、プレイヤーたちのサブリーダが最初に口を開いた。
彼は自身の帰還を最初から諦めており、捨石になる事を決めていた。だから、後に続く者の為にも情報を、真実を求めたのだ。
「おやおや。ずいぶんな口をきくね。
まぁいいよ。僕は心が広いからね。情報や真実なんて言わず、何を聞きたいか指定してごらん。ありとあらゆる情報を与える事も可能だけど、その場合は君の人格が持たないと言っておくよ」
「聞きたいのは俺達の記憶にある日本の事だ。俺達にはそこで生まれ育った記憶があるが、それは本物か? いや、そもそも日本なんて国が、本当にあったのか?」
「――凄いね。人は真実から目を背けるものだと思っていたけど。
君たちの推測は1から10まで正解だと言っておくよ。
日本なんて国は、僕の知る全ての“世界”の何処にも無い。日本なんて国があるのは、僕が造った仮想世界の中だね。
そして君たちの記憶も僕が用意した物だ。この仮想世界も含め、何から何まで作り物。君たちが誕生した瞬間から全ての世界は生まれている。
これが真実だ」
神に挑むつもりだった18人。
彼らに告げられた答えはどこまでも無情であり、救いが無かった。