デスなマーチ(暗喩)
結婚、ねぇ。
結婚そのものに悪いイメージを持っていない。人生の墓場という話もあるけど、それって嫁次第じゃないかな。美人の嫁さんを貰って人生バラ色っていう奴もいるにはいるわけだし。
ただ、俺にとって結婚は未経験っていうのが圧し掛かるわけで。いや、結婚なんてそう何回もやるもんじゃないだろうけど。
前も、日本の俺も結婚はしてないんだよ。どうにも踏ん切りがつかないって話なんだ。
今の俺は12歳ぐらいって事もあるし、まだ早いんじゃないかな。
日本の俺が当時26歳で結婚してなかった事を考えれば、ズルズルと先延ばしにする問題のような気もするんだけど。
現実味が無いというか、束縛されるのが嫌というか。
……恋人ができても長続きしない理由って、彼女らは俺のこんな所に愛想を尽かしたんだろうなぁ。
両親、特に母さんからは「いい人はいないの?」とよく聞かれたけど、あんまりいい返事をできなかったのは心残りだよなぁ。
その報告のために、命の危険を冒してまでダンジョン攻略をしたいとは思わないけど。ごめんな、親不孝な息子で。
そんな俺に婚約を迫られたところで困るだけだ。
特にクラン内の恋愛を禁止したいとまで思わないけど、それが理由でクランが割れるとかだけは勘弁してほしい。
いや、こんなことを言っているのはただの言い訳で、単純に俺は結婚したくない、無責任に生きていたいって思っているだけなんだけどね。
そんな俺は「結婚しなくていい」と言ってくれそうな人を求め、助けてくれそうな人の所に行ってみる事にした。
非常に情けない話だが、周囲から結婚しろと言われ続けるのはストレスなんだよ。
せめて愚痴を聞いてくれそうな相手が欲しい。
まずは桜花の所に行ってみた。
「結婚、ですか? いつかはしなければいけないのですし、早めに婚約されるぐらいは構わないのではないですか。
婚約されたからと言って実際に結婚するまでは女遊びを制限される事もあまりありませんし、特に影響は無しと思われますが」
桜花、まさかの裏切り。
ホムンクルスという種族の特性上、結婚という行為に現実味を見ていないがために、数値的な有利不利だけで話されましたよ?
思わぬ質問をされキョトンとした表情の桜花は、この件に限定して味方になってくれなさそうである。
「立場上、しょうがないのではないでしょうか?」
「ララもそう思うのですの」
「むしろ、あの子たちってその為に用意されたんじゃないの? 問題ないと思うけど」
イーリス、ララ、ミレニアも論外である。
悔しいので、少しカウンター。
「お前らは? 恋人がいるようには見えないけど」
「「「ぐはっ!?」」」
クリティカルヒット。
3人は致命傷を負ったようだ。特にララはダメージが大きい。胸や顔を押さえ、机に倒れ伏した。
16歳以上19歳までの彼女らは、今が結婚適齢期。ここを逃すと年増扱いされるのが現代以前の結婚事情である。恐ろしい事にギルド内の既婚者率は80%以上なのだ。
つまり、恋人がいない、未婚の彼女らはわりとヤバい。
男はあんまり結婚について言われないけど、女性はね。子供を産むリスクを背負っているからね。若くないと危険なんだよ。色々と。
俺の放った一撃により、3人とはこの件に限定して完全敵対の関係になった。もう二度とこの話は振らないでおこう。
やっぱり、女性相手に愚痴をこぼそうっていうのが間違いなんだよな。
パーティ内に味方を求めたが徒労に終わったため、俺は外に出て愚痴を聞いてくれそうな未婚の男を求めて旅立つことにした。
本命はゴラオンかな。ジョンやバラン、アゾールさんらは既婚者だし。
やっぱり男は若い者同士で遊ぶべきだよな。
その後、婚約者のいたゴラオン達に絶望した俺は、1人寂しく飯を食うのだった。




