異文化交流、次の一歩
外国料理屋の方は、それなりに外交官関係者が客として来るようになった。俺もたまに顔を出しているので間違いない。
やっぱり和食を出すより失望されないのが良いらしい。
客が来ずに交流も何も無いよりマシだ。外国料理屋に通う事に慣れてくれれば他の店にも通ってくれるかもしれない。
米などを料理屋で出す場合、グランフィストで購入できる米の全てを料理屋で消費しかねないので、下手な物を出せば反感は必至。無難にまとまったと自負している。
もし米料理で失敗していたら、どんなことになっていたんだろうね?
そうして緩やかな交流が始まってしばらく時間が過ぎた。
人の行き来が始まれば隠し事はし難くなり、結果、より隠し事のしやすいグランフィスト側が一方的に恩恵を受けるようになる。
主な成果は馬車型ゴーレム『魔導車』関係だろう。
彼らの使っている馬車に不自然さを感じた者が上に報告して、その存在が明るみになった。
こちらも飛行機型ゴーレムのソラカナを使っているのだから、馬車をゴーレム化したことは驚かない。
しかし使われている技術は向こうの方がそうとう上で、メンテナンス性なども考えるとこちらでも導入したいと思える出来だった。ゴーレムだと『人形遣い』のスキルで回復させられるからね。細かい部品を使う所はソラカナも完全にゴーレム制御にしたいんだよな。
一方で成果が上がらないのは民族融和政策というか、ハニートラップ関連である。
外交官らの近くに魅力的な異性を配置し、どうにか結婚にこぎつけたいというのがグランフィスト側の考えだ。婚姻外交はこの世界では現役どころか主流派である。狙うのは当然と言えた。
もちろん正規のルートで政略結婚を打診していたのだが、「我々は自由恋愛の国ですから」と一蹴されてハニトラに切り替えた経緯がある。
日本でもそれなりに政略結婚は行われているが、ここに来た大半は政略結婚と縁の無い庶民のため、言っている事は間違いではない。ついでに既婚者もいるので、ハニトラは難しいだろう。特に相川は難易度ヘルモードだと思う。
「だからって、俺にターゲットを移すのは間違っていると思う」
「いえ。前例を作るという意味では間違っていませんよ、マスター」
上手くいかないハニトラにグランフィスト側は業を煮やしたのか、何故か俺にお鉢が回ってきた。
現状はまだ打診があったという程度だが、ジャニスさんから婚約を考えて欲しいとお願いされたのである。
顔を会わせたことも無い相手と結婚するのは、まだ12歳ぐらいのはずの俺に結婚は早いのではと断ろうとした。
しかし結婚相手はこちら出身者なら誰でも良く、ならば婚約発表にしましょうかと攻めてくる。ジャニスさん、かなり本気である。
周囲もこの結婚話には乗り気なようで、肯定的な意見が大半を占める。
どうやら、俺が日本に行く事を懸念していたようだ。俺がこちらに残る気でいると知るとホッとした表情を見せる奴が多いのでたぶんそうだと思う。
そもそも俺はダンジョン攻略をする気が無いので、関係ない話だと思うんだけど。
一番乗り気だったのがクランの新人連中で、年齢的にもちょうどいい相手ではあるんだけど……なんだかなぁと思ってしまう。パーティ内恋愛はパーティ崩壊のフラグにしかならないって話を聞くし、出来れば遠慮したいんだけど。
駄目なのかな?