異文化交流⑧
どのファンタジー系世界のゲームでもお約束の設定が一つある。
「東方の国家」である。
小さな島国で、独自の文化をもった特殊な国。侍、芸者、忍者と西方国家には無いジョブがあるという。
更には食料関係も全く違い、米やら味噌やら醤油やら、そういった物を生産している不思議国家があることになっている。
「七鍵世界TRPG」にも同様の設定があり、小さいながらも取引があるため、米などを購入することは難しくない。
栽培に関しては「誰もが諦めている」ほど難しいので、米をグランフィストで育てるのは無理っぽい。土というより気候が合わないようだ。
取引の規模が小さいので、米などは希少品である。
ついでに、食文化が全く違うのでなかなか売れないオマケつき。ギルドでまとめ買いしてみたけど、誰も邪魔をしない程度には売れていないようだ。
そんな訳で、ちょっとは買っていたのだ。米や味噌、醤油を。グランフィスト産の小麦やその他調味料と比べると10倍ぐらいするし短粒米じゃなかったから、すぐに買うのを止めたけど。
気候の問題もあるけど、米を育てるので一番大きな問題は水回りだ。米の生産には大量の水を必要とするのだ。
そんな訳で、米作、水田の許可が下りる事はない。少なくとも、グランフィストでは。
他の都市は知らないよ? 水や土の都市ならまだ可能性があるんじゃないかな。
……水は無理か。北の方だから、温帯の植物である米が育つ環境じゃない。
そんなわけだから和食は魚関係以外を早々に諦めて、ネタで外国の料理を再現してみる。
まず、トーストを1枚置く。その上にベーコン、ステーキ、チーズ、ハム、スライスしたオニオン、チーズ、トーストの順で積み上げ、フライドポテトを周りに盛る。
そこにワインベースの特製ソースをぶっかけ、オーブンで焼く。
出来上がった料理はナイフとフォークで切り分けながら食べる。
ポルトガルかどこかの郷土料理だったはずだ。名前はもう覚えていない。TVで見ただけだが、かなりごつい料理ったと印象に残っている。
ソースが適当なのは別にいい。ソースは家庭ごとに違いがっていいから、グランフィスト風と強弁できる。
でもこの世界にはまだジャガイモが無いとか変な所で中世ヨーロッパっぽい所があったので、本当に再現率は低めになってしまったが、それでも地球の料理である。俺は、一応頑張った。
「これが、日本人の食べる料理ですか?」
「ううん? 日本から見たら地球の裏側にあるような国の料理」
「その料理で、我々にどうしろと?」
「美味しいよ? 臭いけど。あと、変に日本食や和食を名乗ると逆に反感を買うからさ。地球のヨーロッパ風料理ですって言った方が受け入れられると思う」
米と味噌と醤油は戦略物資になり得ると買占めを行ってもらったが、それは転売目的でいい。それよりも東方の商人と渡りを付けさせる方が喜ばれるかな。
それに、変に和食や日本食を名乗ると、間違いなく違和感しかない韓国系日本食とかになるので喧嘩になりかねない。知っているか? 韓国人は日本蕎麦の店を出しても、客の目の前で、蕎麦をハサミで切るんだぜ。サムギョプサルじゃねぇよと思わず突っ込みそうになった。海外出張の苦い経験だ。
飯は確かに生活の基礎だが、だからこそ扱いは慎重な方がいいと思うんだよね。




