異文化交流②
「お久しぶりですジャニスさん。また、やつれましたね。もう少し、体を労わってください」
「お久しぶりです、レッド君。今は仕事が忙しいので、これが終わるまではあまりゆっくりできないのでうよ」
久しぶりにジャニスさんにあったが、彼はこのあいだ見た時よりもさらにやつれていた。
抜け毛が広……酷いのか、フサフサだった頭が少し寂しくなった気もするけど、その点については指摘しないでおく。武士の情という奴だ。俺は騎士だけどな。
あと、口が上手く回らなかったのか、挨拶が少し噛んでいた。
どれだけ疲れているんだか。
そんな体で無理してわざわざ会わずとも、「返事はまた後で」と言ってくれてよかったのに。
「あの日本人たちと交流を持とうというのですね?」
「ええ。何が起こるにせよ、縁が有った方がいいと思いますので。私が適任かどうかは分かりませんが、やってみたいと思います」
「そうですか……」
ジャニスさんは深く椅子にもたれかかり、何かを考え出した。
俺はしばらくそれを見守り、彼が口を開くのを待つ。
「レッド君は、戦争が起こると思いますか?」
「いいえ、普通の日本人なら、そんな事はしないと思います」
「ですが、我らが主は戦争になると断言しています。あの方は預言者か予言者であるかのように未来を言い当てる事があるのですよ。その主が断言するのですから、戦争になると思って動いています」
預言者か予言者、ね。
神様から言葉を賜るのか、それとも自身の力で先を見通すのか。細かいことは分からないが、実績があるっていうのが凄いな。
その領主が何を理由に戦争が起きるというのかは知らないが、教えてもらえないという事は何らかの秘密があり、隠す気でいるという事。
だったら聞かない方が無難か。
だがそれなら尚更、縁を結ぶ必要があるな。
“終戦”を殲滅戦として欲しくないし、そのための下地作りが要るからな。それには日本人勢力に信頼される人間が居ないと不味い。
それでも独立運動を行う組織とかが暗躍するわけだが……。
あと、戦争回避をする為の努力をしておくことも大事だ。あっちにだって戦争嫌いは居るだろうし、人間同士で殺し合うなんて狂った事を好む人間なんて少数派だろうから、少数の狂人に扇動されないように手を打つべきか?
日本人の政治家嫌いは本物だけど、政治家に扇動されやすい国民性もかつての選挙が証明している。対策が無いと不味いだろうな。
馬鹿な事をする奴はいくらでもいる。その馬鹿に騙される人も必ず大勢いる。
そこは知恵比べなんだろう。俺の苦手分野だけど、そこは人を頼ればいいか。
俺は日本人と交流を持つ許可をもらうと、ジャニスさんの所を辞去する。
ただ、俺はまだこの時、甘い考えでいたと知る事になる。
年単位の恨み辛みの根強さは、想像以上だったのである。