メイドトリオ
日本人関係とは別に、現地人のギルドも多くある。
ギルドは互助会の役割が強いので、浅学な連中にとっては無くてはならないものだ。だって、現地民は≪共通語≫スキルが3未満の奴もいるんだよ。
どんなにINTが高かろうが、学ぶ機会が無いならしょうがないだろ。
文字が読み書きできなきゃ読める奴が代わりに読み書きをして、喋るのが苦手な奴は代わりに商人との交渉をしてもらい、自分から動き出せなきゃ誰かが音頭を取る。
協力って奴は大事だ。
この手の役割分担がしっかりされているところを見ると、この世界は中世っていうより近世の方が近いんだろうね。封建社会だったり教会勢力が強くて宗教色が抜けきっていないけど、遠方との通信手段もあるっぽいし、民衆の生活レベルから推測できる技術的にもそんなもんか。
こうやって民間レベルで冒険者ギルドがいくつもあるのは、世界規模の冒険者ギルドが無いからだ。
統一された「冒険者ギルド」が無いのは行政側がそういった組織ができるのを嫌うからだったり、冒険者側が統一されたギルドに唯々諾々と従うほどお行儀がよくなかったりするからだ。
たまにというか稀に、大きすぎる冒険者ギルドの冒険者が問題を起こした時にギルドが解体されるらしい。で、リーダーは責任を取らされ首チョンパ。
怖い話だね。俺には関係ないだろうけど。
こういった話を聞くと、封建社会の闇を見せられた気分になるよ。たぶんも何も、それは絶対に領主側の都合で組織を解体しているわけだし。
中世ヨーロッパのギルドは経済的に領主と戦える土壌があったから生き残ったわけだけど、ここの冒険者ギルドは横のつながりが薄いわ経済的強者に慣れない仕組みがあるわで上手く飼いならされている。
そういやぁ、こういった状況下では馬鹿な日本人が民主化運動をするってお約束があるんだけど。
それ、やられたら俺らまで被害が広がらないだろうな?
ギルド関連とは別に、ここ最近で変わったことが一つある。
「マスター、お食事の準備が整いました」
俺に慣れたのかレベルが上がったおかげか、はたまた他の要因が何かあったのか。
メイドトリオが喋るようになった。
ぎこちない喋りだが、それでも直接言葉のやり取りができるのは素晴らしい。これまでは桜花が空気を読む形でしか意思疎通ができなかったからな。俺だけが一方的に喋るのは会話とは言いません。
まぁ、喋るようになったとはいえ、まだ会話は事務的な物が多い。
これからゆっくりと解り合っていけばいいだろう。
とりあえず、今はキャラウェイの作った食事でMP回復かなー。
味は宿の飯に劣るけど、1日1回は食べないと損だし。食費は余分にかかるようになるけど、≪薬膳≫、システム的には美味しいです。
これからも精進してほしいね。