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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
冒険者レッド=スミス
135/320

幕間:俺と相川(後)

「あの裏切り者と話をしたそうだが、どんな奴だった?」

「普通の、そうだな……小物だな」


 相川はレッドが去った後、仲間の一人とレッドの事で話をしていた。


「帰れない可能性が高い、それを自力で理解しているから馬鹿ではないな。考え無しと言う事は無さそうだ。

 しかし、覇気が無い。上昇志向も無ければ強い目的意識が無い。だからどうでもいいことに迷うし動きが重い。

 ああ、変に頭が良いの問題だな。先の危険が見え過ぎて恐れをなしていると言えばいいのか?」


 相川のレッドに対する評価は辛らつだ。能力的な面では見るべきところがあるが、臆病というか惰性で生きる大衆的な所が全てを台無しにしていると感じている。

 それでも上に立てる人間ではないが、良い部下にはなるだろうと結論を出した。



「そうか。では、仲間に引き込めそうか?」

「無理だな。見た感じでは一度仲間と認めた奴を裏切れるほどの強さが無いようにしか見えん。脅してみせようが、その弱さで逆に折れるだろう。

 ああ、そうだ。奴の仲間に手を出すなと全員に通達しておけよ。アレは身内のピンチの方が実力を発揮するタイプだったはずだ。

 見たところ奴は比較的おとなしいタイプだ。こちらから下手に手を出さなければ、敵対してくることも無いだろう」


 その上で、相川はレッドに見るべきところは無いと切り捨てる事にした。

 相川たちは「裏切り者は何度でも裏切る」の理論からこちら(プレイヤー)への寝返りを打診する案もあったが、実際に話してみて無駄そうだと思ったからだ。

 もしも人質を取って脅した場合、レッドは秘密にしろと言われていても仲間に相談するだろうと予測された。この辺りは相川の勘でしかない根拠のない話だが、それは事実である。レッドであれば必ずそうしただろう。


 また、相川はレッドが仲間を殺され半狂乱になった件を思い出して、自分の仲間がよけいな事をしないようにと、釘を刺し直すことにした。

 普段大人しい人間ほどキレた時が怖いというのは彼の中で常識である。敵を減らすのも戦術の内なのだ。


 ちなみにその予測は半分正解で半分間違いだ。レッドは対プレイヤー用の戦術として、『倉庫番』の中いっぱいに詰め込んだ人間の死体を≪アイテムボックス≫内で腐らせてから毒とセットで日本人村(じゅう)にバラまくという方法を考えていた。その時にティナのような飛行型モンスターの背に乗れば反撃も受けないだろうと。死体は病原菌の温床であり、その対応に回復魔法が死ぬほど必要になるだろうと。もしくはストーンゴーレムの石材を高空からばら撒くとか。

 戦争は嫌だ、参加しないと言いつつ、そういった案だけは献策する。レッドはキレなくてもかなり怖い思考の持ち主だったのである。





「それよりも、底上げで調子に乗った連中はどうする? いつまでも抑えが利くとは限らないぞ」

「攻略を急ぐ、それしかあるまい」


 レッドの事を話し終えれば、次は村の中の事だ。


 最近の相川らは5層攻略用にこれまで3層辺りでくすぶっていた連中を鍛えだしている。

 パワーレベリング自体は問題なかったが、そうやって促成栽培された連中がまだレベルの低い仲間相手に暴力を振るうようになっており、それが問題として表面化しつつある時期だった。レッドに殺された連中もそういった促成栽培組だった。そして、だからこそ相川は頭を下げたし、その事でごねたりしなかったのだ。


 簡単に力を手に入れた者は、軽い気持ちで力を使う。

 レッド達を襲ったのも、それが原因だと相川らは推測していた。



 その後もダンジョン攻略の打ち合わせを行い、しばらく話し合ってから相川は一人になる。


「偽者である事が最悪、か」


 相川はレッドとの会話を思い出し、苦笑した。


「最悪はもっと別の形だぞ、レッド」


 相川は己の考える最悪に、おそらく正解であろうその現実に、傷む胸を押さえる事しかできなかった。

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