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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
冒険者レッド=スミス
128/320

日本産の襲撃者

 冒険者が増える事は、別に大した問題でもない。

 ダンジョンは多人数攻略を防ぐように人数制限があるし、ごく稀にあるダンジョン内での出会いは桜花たちの件を含めたところで片手の指で事足りる。

 つまり、獲物の奪い合いは、無い。


 それに増えたのは2層がメインの冒険者であり、3層メインの冒険者であれば過半数が同じギルドの顔見知りである。プレイヤーでもなければ問題にもならないし、そのプレイヤーであってもいきなり襲いかかってくるほど短慮ではないだろう。



 ……俺はこの考えを、すぐに撤回することになる。





「死ねぇっ!」

「うーわー。馬鹿がいるよ」


 3層で他のクランの冒険者に混じって探索していた時の事である。

 「目指せ2ヶ月以内に4層到達」という、なかなか理想と実力の高いパーティと組んで3層の奥にいたのだが、そこでプレイヤーのパーティに襲われた。

 通路をすれ違う際、いきなり切りかかってきたのだ。



 敵の数は6人。

 こちらの数も6人。

 人数に差は無い。


 こいつらも3層の奥にいるのだし、パーティの平均レベルは最低でも12を超えるはずである。4層まであと少しならこっちと同じ14ぐらいあっても不思議ではない。戦闘経験が豊富なベテランのはず。

 それがわざわざ「死ね」なんて声をかけてから襲撃してきたのだ。正直、アホじゃないかと思う。


 襲撃すると教えてもらった分、俺は余裕をもって楯で攻撃を防ぐ。

 仲間も攻撃されたことでスイッチが入り、他の連中の襲撃に備えると同時に目の前の馬鹿の首を刎ねた。


 一応、俺は後衛として隊列を組んでいた。そんな俺に直接攻撃を仕掛ければ、周囲の仲間が反応できない訳が無いのだ。



「ああっ! トンプウ!」

「貴様らよくも! 仲間の敵討ちだ!」


 世の中とは、基本的に理不尽である。

 俺達にしてみれば正当な自衛行為であろうと、逆恨みする奴はどこにでもいる。


 彼らにしてみれば仲間が暴走したとはいえ、殺すほどの事では無いと言いたいのかもしれない。

 しかし人に刃を向けた以上、殺されても文句を言えないのがこちらの世界の常識だ。日本でも、取り押さえるのが困難と予測されるなら生存権の行使という事で正当防衛もしくは過剰防衛が成立するはずだ。

 彼らの復讐心は、法的に考えれば正当性が無い。



「この、人殺しどもめ! 死ねぇ!」

「いや、いくらなんでもその冗談は駄目だろ。これから人を殺そうとしている奴が「人殺しども」って」

「煩い! 貴様ら悪党を成敗することに間違いなんてない!!」

「先に仕掛けたのはお前らの仲間だろうが」

「殺す必要は無かったはずだ!」


「レッド、もっと煽れ。相手の冷静さを奪うんだ」

「了解」


 思わず突っ込みをしていると、こっちの仲間から「もっとやれ」と指示が出た。

 会話の分だけ俺のリソースは減ってしまうが、相手5人の冷静さを削れるなら収支は黒字だ。こちらの人数が多い事もあり、安心して煽る事ができる。


「と言うかさぁ、不意打ちしかけて失敗したら、今度は逆切れして殺しに来るとか。敵討ちだのなんだの言ってるけど、最初から最後まで俺を殺す気満々だよね」

「貴様! この、裏切り者め!!」

「裏切り? 何を? 少なくとも同じ集団に所属してたわけでもない俺が、お前らの何を裏切るのさ?」

「同じ日本人だろうが!!」

「馬鹿? 生まれが同じってだけで身内のわけ無いだろうが。勝手に仲間扱いするなよ、犯罪者」


 もっと煽れと言われたが、やっている事が根本から間違っている相手であれば、そこを指摘すればいいだけだ。そういった手合いであれば一般常識や正論だけで勝手に怒り狂う。



 冷静さが無くなれば何をするにしても精細さを欠くし、俺にヘイトが集中していれば他の仲間も動きやすい。

 結果、襲ってきたプレイヤー6人は何の見せ場も無くあっさり全滅した。


 なんだかなぁ、と言うのが俺の感想である。

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