表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
冒険者レッド=スミス
117/320

アゾールの見解

「悪い事は言わん。先に進め、そして4層を目指せ」


 最初に相談したのはアゾールさん。安定の衛兵隊長さんだ。

 俺の話を聞くと、彼は難しい顔をして4層行きを強く推した。


「昔と今では状況が違いすぎるんだ。

 ジョブ解放される前なら2層で燻っていても許されたが、今は3層に行くのが当たり前になりつつある。ジョブ解放された奴が増えだした分だけ、どこも余裕が出始めている。

 お前は少数しか解放していないと思うかもしれんが、兵士や衛兵のジョブ解放をしたときに冒険者を兼業でやっていた奴もそれなりにいてな。『荷運び』ジョブを得た者は強制的に残留させられたが、他のジョブでも戦士系に偏った者は退役が許された。よって、冒険者にもそれなりのジョブ解放者がいるのだ。……というより、お前のギルド所属なんだからそのあたりは把握しているよな? っておい、把握しとらんかったのか」


 戦力が強化され、2層から3層に冒険者が集まるようになった。これはいい。

 ジョブ一つではレベル10が最大で、それでは3層で戦うのもカツカツだったりする。よってこれまで通りなら安全に稼げるのは2層が限界となる。

 しかし、ジョブが解放されて戦力が強化されれば3層でも安全に稼げる。少ないリスクで大きな収入。誰もが考える事だよな。

 もしかしたら2層を中心に稼ぐ方が効率がいいかもしれないと2層に残るクランも出るだろうが、リスクを一切考慮しなければ3層の方が稼げるのは間違いないしなぁ。個人的な感覚ではリスク2倍で実益2割増しってところだけど。



「いいか、お前がお飾りのままだったら俺も何も言わなかった。子供であることを利用し、2層で留まるように言っていた。

 しかしだな、レッド。お前はすでに4層に足を踏み入れ、その攻略に手を貸した。実績を作っちまったんだ。

 もしもそんな「実力のある奴」がいきなりサボり始めたら、周囲はどう思う? 何も実績が無いなら多少ゆるい戦いをしても許されるが、実力を示した矢先にサボりだせば、当然のように不満に思うのが人間だ。悪い事に、お前の立場がギルドマスターってのも足を引っ張るだろうさ。

 悪い事は言わん。先に進め。もう、お前にはそれしか道が無い」

「いや、冒険者を引退してデスクワークに集中するって言うのも悪くないと思いません? サボるんじゃなくて、サポート専門に回るんです。それなら周囲も納得すると思うのですが」


 アゾールさんの言う事は分からなくもないが、逆に俺が飛行ユニット(ソラカナ)を作った事で別の実績も提示できたと思うのだ。

 俺は今後そっち方面で活躍するからみんな頑張ってね、そう言えば納得できるんじゃないか? 幸い、ソラカナの改良という重要な仕事もあるし。


 俺は錬金術方面で頑張ればいいと思っていたが、アゾールさんはそれでも首を横に振る。


「駄目だ。

 錬金術師として活躍しようが、結局は冒険者稼業を要請されるぞ。実際に現場を見て必要なものを考える錬金術師がいないからな。

 つまりだな、周囲の要求は錬金術師のお前じゃない。冒険者ギルドのギルドマスターでもない。最前線にいる、戦える錬金術師なんだ。

 『破魔の剣』『夜明けの光』に、お前の代わりになる奴がいれば話は別だが……」

「どちらも冒険者が30人近くいるんだし、『錬金術師』は、いたはず。俺じゃなくてもいいんじゃあない、か、な?」

「そいつらの錬金術師としての腕は?」

「レベル2か3です……」


 つまり、レベル4の俺未満であった。


 残念ながら、最前線にいる冒険者の錬金術師レベルは低い。ファーストジョブのレベルが高すぎて、生産ジョブのレベル上げがなかなか出来ない状態だからだ。

 総合レベルは俺より高いけど、すでに10レベルが一つあると他二つのジョブのレベルの上がり、獲得経験値はどうしても抑えめになる。

 よって、最前線で最も錬金術師レベルが高いのは俺で間違いない。


 余談になるが、そもそも錬金術師のレベルは低い。ジョブ一つのころ、彼らには戦闘系のジョブが無かったわけであり、まともに戦えなかったのがその理由だ。

 訓練である程度レベルは上がるし依頼(クエスト)報酬で経験値を獲得することもあるが、どうしても戦闘で経験値稼ぎする方が効率がいいのである。



「他の連中も同じことを言うだろうさ。あとはパーティで相談してこい。

 こういった事なら仲間内の意見統一の方が大事だぞ」


 一通り話を終えると、アゾールさんは仲間の所に行くように俺を追い出す。


 出来れば、仲間にはこういった話をしたくなかったんだけどなぁ。

 俺は肩を落とし、ギルドハウスに向けてトボトボと歩いて行くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ