表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
冒険者レッド=スミス
116/320

ささやき

 人間、必死になっている時は出来ても立ち止まると動けなくなる事がある。例えば喧嘩で誰かを殴る事は出来ても、素の状態で同じ事ができる奴ってのはそうそういない。

 社会的な生き物になるとは、暴力を遠ざけるという事でもある。


 「金持ち喧嘩せず」と言うが、それは紛れも無い真理だと思うよ。

 だって、俺も金があるからもう戦いたくないなって思う訳だし。





 嫌だ嫌だと内心では思いつつ、いつものようにダンジョンに潜る。

 俺のパーティは2層の攻略をして3層に向かうのが目標だが、現在は実力(レベル)が足りないので、経験値稼ぎが主な目的になる。もちろん、依頼もこなして日々の生活資金を稼ぐ事も大事だけどな。



 レベルが上がると、それだけ戦闘に余裕が出てくる。

 格上相手の戦いばかりだった3層と違い、2層に出て来るモンスターは同格もしくは格下といったところ。

 仲間にとっては同格もしくは格上なのでパーティ全体では互角ぐらいに落ち着く相手。気は抜けないが、苦戦することはない。


 俺はアーティ内の最高レベルと言う事で最前線に出る。それが後衛の多いパーティで最も戦況を安定させる手段だからだ。

 ストーンゴーレムの拳を盾でいなし、直撃を防ぐ。回避しないのは攻撃を後衛まで届かせない為であると同時に、相手の体勢を崩す目的からだ。自分一人ならともかく、連携して戦う時はこの方が効率がいい。


「せいっ!」


 俺が体勢を崩したストーンゴーレム。通常よりも大きくなった隙にイーリスがハンマーを叩きつける。普段は剣を使うイーリスだが、彼女はゴーレム相手ならハンマーをメインに切り替える戦術を取っている。『手品師』ジョブは武器の交換を容易にするので、相手にあわせて武器を入れ替えているのだ。

 イーリスのハンマーはゴーレムの腕、肘に相当する部分を破壊する。関節が脆いのはゴーレムも人間と変わらない。レベル4と熟達した戦士になりつつある彼女にとって、そういった部位狙いも安定して行える作業でしかない。



「≪ファイア……≪ファイアストーム≫」


 桜花は後衛で、敵の後衛を潰している。相手のホムンクルスが≪ディスペルマジック≫を使おうとするが、それを予測してタイミングをずらし無駄足を踏ませ、見事に魔法攻撃を決める。

 これは≪ディレイ・キャスト≫という対抗潰しのスキルで、レベル4の『火属性魔術士』になった桜花が獲得した新しい力だ。


 俺ほどでないにせよ、みんな強くなっている。



 2層を攻略するには、全員がもう2レベルか3レベル上げるのが適正レベルだ。だいたい総合レベル12がボーダーだと思う。安全を考えるなら今の俺と同じ、レベル13だな。

 そうやって全体を俯瞰し今後の計画を立てながらも、心の中で弱い自分がささやく。


 ――ここまででも構わないのではないか?

 ――もうここがゴールでもいいんじゃないか?


 いったん戦闘が始まればいつものように動き、敵を屠る。

 でも、一度芽生えだした疑念は枯れたわけではなく、自分の中でささやき続ける。



 駄目だな、これは。

 戦闘中以外はどうにも集中しきれない俺は、何か取り返しのつかないミスをする前に頼れそうな大人に相談することにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ