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北極星の竜召喚士  作者: 猫の人
なんちゃって錬金術士
115/320

冒険者レッド=スミス(前)

 最近は強くなっていった影響か、ダンジョンに潜る事に何の疑問も抱いていなかった。力を得た事により理性の枷が外れたのだろうか?


 俺にとって冒険とは、生活の手段でしかなかった。

 力が無い、経験が足りない、伝手になる人も知り合いもいない。

 何も無いから、唯一縋れそうなゲーム知識に全力で縋った。

 それだけのはずである。


 手持ちの資金で当面の生活は何とかなっても、1年2年の猶予ではその後の長い人生が心配だ。将来計画として、ダンジョンに潜ってお金を稼ぐ事にした。

 今でいう1層での収入と仲間との生活費を考慮し、20年か30年ほど冒険者で稼ぎ、あとは悠々自適とまでは言わないが、この世界基準でそこそこの引退生活を送ろうと思っていた。


 それが仲間を殺され孤立しかけ、冒険者ギルドを立ち上げ、ギルドマスターになって、パワーレベリングで強くなって、4層に足を踏み入れるに至る。

 200万G稼げばいいと思っていた当初の計画からは大きくずれている。

 家はギルドハウスで代用可能かね? まぁ、普通の家を買う気はもう無いかな。



 ついでに言うと、200万Gの目標は半ば達成済みだ。既に100万G以上稼いでいる。

 特に大きかったのが賭けの胴元で、賭けによって動いたお金の1%を懐に入れただけなのだが、それだけで40万Gも手に入った。みんなこういった娯楽に目が無いのだ。


 今の俺は錬金術師としてもそこそこの実力があるので、このまま錬金術に慣れてくればそれで食っていくことも可能なはずだ。





 そうなると、冒険者を続ける理由が無いような気がする。

 命を賭けて冒険者をやる意味があるのかと、自分に問いかけてみる。


 返ってくる答えは「何も無い」であった。


 仕事にはやりがいを求めるもので、それを言えば冒険者はやりがいのある仕事だと思う。

 だが、俺は死にたくない。命を賭け続けるのは嫌だ。


 必要であればしょうがないと割り切れるが、必要なくなったら途端に冒険に出るのが嫌になってきた。



 これは冒険者であれば大なり小なり誰もが感じる事で、3層に進む冒険者が少ない理由で最も大きなものである。


 命の危険を極力減らし、安全な所でそこそこの稼ぎを得る。ダンジョン2層が冒険者としての生活を保障してくれるので、3層を目指すものなどほんの一握りだった。

 ダンジョン3層の稼ぎは2層とそこまで大きく違わないのに、命の危険は段違いだったからだ。


 今ではジョブ解放が徐々に影響し、3層を目指すことを視野に入れる冒険者が増えつつあるが、それでもまだ2層でいいと思う者も少なくない。大半の冒険者はジョブ解放をしても楽になるというのが感想であり、次に進む原動力にできないでいる。


 死ぬ思いをしたい者など滅多にいない。





 生と死のギリギリのラインに身を置く事が生きている実感を得られる唯一の瞬間だとうそぶくバトルジャンキーがいる。

 まだ見ぬ地を目指す、未知の探究者がいる。

 どうしても叶えたい願いの為にダンジョン攻略を目指す集団がいる。


 でも、俺はそのどれでもない。

 もしも俺がダンジョン3層、さらに先の4層に足を踏み入れるとしたら、俺だけの理由が何か必要になる。


 あの時、死んだのがメイドの誰か一人だけであったなら、俺はその死んだ一人のためにダンジョンの攻略をしたかもしれない。

 だけど死んだのが3人で、生き返らせれるのが1人だけなら、俺はその手段をとる事ができない。そこは自称神様がはっきりと言い切っていた。



 どうしよう?

 今の俺は、すごく中途半端だ。


 気が付かなきゃ、良かったよ。

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