表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ショートショート

面倒なこと (ショートショート71)

作者: keikato

 妻は生まれもっての性分なのか、ひどい面倒くさがり屋である。なにをやるにしても、あとにまわせることはできるだけ先に延ばし、手の抜けるところは必ず手抜きをする。

 専業主婦だから家事はいちおうこなすが、夕食はオレが帰宅してから、えっちらおっちら支度にとりかかるといったありさまだ。


 結婚して一年がたつ。

 面倒くさがり屋のほかは、これといって不満のない妻だった。それで大目にみてきたのだが、最近はオレもいいかげんうんざりしている。

 そして、今日。

 オレはついに堪忍袋の緒が切れた。

 夕食が用意されていないばかりか、部屋は散らかしばなし、洗濯物はベランダに干されたままなのだ。

 で、当人といえば、ソファーに寝そべってテレビを観ている。

「おい! なんだこのザマは。さっさと、やるべきことを先にすませろよ」

「すぐにやるわ」

 妻が素直にうなずく。

 怒りのほこ先をそがれ、オレもつい口調がやわらかくなった。

「今できることは、今やるのが一番いいんだよ」

「そうなのよね、やっぱり」

「先延ばしにしても、どうせあとでやることになるんだからな。先にすませた方が、オマエだって気分がスッキリするだろ」

「そうだわ! ついでにあれも……」

「あれって?」

「すぐに取ってくるわ。一カ月前からそのままになってたの、面倒くさくて」

「一カ月もか」

「ええ。でも、これからすぐにやるわ。スッキリしたいんで」

 いつになく腰が軽く、さっそく妻は隣の部屋に消えた。

 何をそんなにほっといていたのだろうか?

 とにかく妻が心を入れ替えてくれたことはいいことだ。オレとしても歓迎すべきことである。


 妻が紙を手にもどってきた。

「これだけど、いろいろ書くところがあって面倒くさいのよね。それでそのままにしてたんだけど」

 テーブルに広げられたのは離婚届であった。

 面倒なことになったものだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 面倒くさがりの奥さんだから、提出を任せておいたら、一生、離婚しなさそう。
[一言] 婚姻届自体出して無かったとか 家庭内離婚の仮面夫婦 みたいなオチもあるかもw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ