case6
4/24改稿
月の明かりのない夜。
海は何時もと同じく静かに波の音を運んでいたが今夜は違う物もはこんだようだ。
「浮上完了。周囲に動きはありません。マスター」
「ご苦労。んじゃちょっくら上陸してくるわ」
「いってらっしゃいませマスター。後30分ほどで夜明けですのでお気をつけて」
「うい」
今回の潜入方法は至って簡単。
桟橋にダーインスレイブを寄せて街に入る。
事前に街に入るにあたり、周囲に誰もないことを確認し、街で薬草でも買ればいいな程度の軽い気持ちでの潜入である。
「おぉまさにライジングサンだなこりゃあ」
桟橋から水平線より出てくる太陽をみて、溶けるなどと暗黒ヒッキー駄女神(神原発案)のような事を考えながら街の方へと行く
「ん~?やっぱ木造がおおいな」
この世界の最新鋭の軍船は風の魔法で海中と帆に推進力をえている。
それですら時速27ノットを誇るが魔力量の関係から長続きはしない
漁船に至っては簡単な帆が1枚ついているぐらいで、もはや漁船というよりボートといった方がいいかもしれない大きさだった。
そのまま海岸線沿いに歩いて木造船を観察していく。
「おぉ、朝日か」
やがて水平線の彼方より太陽がその光を海岸線に投げ掛け、砂浜に船のシルエットを写していく。
その光景に暫し見入ると、朝日に照らされる街へと歩みを進める。
「街って言うよりもちょっとした要塞だな」
やはり港が近いからか市場は魚で溢れていた。
この世界で魚の調理方法としては、煮魚か焼き魚が主流のためか刺身などはなく、精々が叩きといったぐらいである。
「これなら売ってもいいかね。どっかちゃんと買い取ってくれるとこあっかな?」
市場の中を人に流されるまま市場を漂っていく。
「どっかに買い取り場所ないかなぁぁぁぁ」
「あの魚うまそぅぅぅぅ」
「ギルドどこぉぉぉぉぉ」
など流されるまま思ったこと駄々漏れにしていた。
「あ、なんかギルドっぽいのあった」
いつの間にかギルドと思われる場所の前に流されていたが帰り道など分からないためギルドへと入っていく。
「ギルドに受付嬢いないとかギルドじゃないだろ」
理不尽過ぎることをいいつつも、買い取り場所へ向かう。
「本日は何を買い取りいたしましょうか?」
「ん、こいつを買い取ってほしい」
と真珠を一粒だけ差し出されたトレーの上にだす
「かしこまりました」
しばらく美人の受付嬢が出てこないか期待しながら待つと先程と同じく眼鏡をかけた青年が出てきた。
「買い取りにつきましてギルド長がお呼びです」
「理由を聞いても?」
「私は知りません故」
などとのらりくらりかわされていた時奥から妙齢の美女が現れた。
「何やってんだいイヴァン、全く。あんたは裏に回ってな、あたしが引き継ぐ。あんたがこいつを持ち込んだのかい?」
「そうだ。で、買い取ってくれるのか?くれないのか?」
「もちろん買い取るさ。全部ね」
「情報はうらん」
「そこまで頭が回るんなら話が早い。定期的にうちに卸さないかい?」
「値段によるな」
ただ者ではない空気に神原も警戒をする
「銅貨60枚でどうだ?」
ここに来る間に市場調査していた彼に取ってそれはふざけている価格だった。
来る途中魚の串焼きですら銅貨10枚だったのだ。
銅貨1枚の価値は日本円に換算しておよそ100円
銅貨100枚で銀貨1枚というのも確認済みである。
「ん~、それじぁちょっと」
「わかっている、銀貨1枚だそう。それでいいな?」
「銀貨…1枚?」
「そうだ。これにはそれだけの価値がある。どうだ?うらんか?」
「いいでしょう。」
それならば…といった体を装い、了承する。
「おぉ、それなら早速渡してくれないか?」
それにたいし神原は一言
「お断り致す」
神原が個人的に一度は言いたい名台詞ベスト10に入る台詞をここぞとばかりに叩き込んだ事にたいし、軽くトリップしそうになる意識を必死に引き留める神原。
「今、なんといった?」
「お断り致すと言ったのだ」
まさか断られるとは思っていなかった妙齢の美女は額の青筋を隠そうともせずにさらに脅しをかける。
「いいのか?この大陸で買い取りができなくなっても?」
「別にかまわん」
「…そうか。残念だ、じつに残念だ」
神原に背を向け最後にこう呟く
「夜道に気を付けろよ」
「クックック、そっちこそな」
その日の夜、やはり来たかとばかりに後ろからの足音に対して、彼がとったのは逃走といういたってシンプルな事だが逃走先はというと…
「味噌汁御代わりってか鍋ごともってきて」
「へいへい、わかったよ」
ただの人間にはたどり着けそうにない。
やっぱ嫌なことを断るっていうのは最高ですよね
2015/3/22ちょいちょい変更