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case45

「マスター。如何なさるおつもりですか?」

「ジュノに関しては保留だ。まだ何も考えてない」


ミドガルズの本拠地である島に戻る道すがら、ジュノの処分を検討する2人。

あまり軽い処分で済ますと内部で不満の種として燻りかねない。

どうした物かと思案しているとピナカから間もなく到着すると報告を受ける。


「…どうしたもんかね」

「マスター。もう着きますから準備しておいて下さい」


それから間もなくして島に到着すると、待っている者達の情報を受ける。


「相手の規模と要求は?」

「規模はガレオン船8隻からなる船団、補給の為水と食料を要求してます。現在は北東の沿岸部に停泊中です」

「ざっくり換算で3000人……戦闘員は約1000人……か」

「戦闘に関わる水夫も含めるともっと増えるでしょうね」

「平和的に済ませたいね全く」

「ならばまずは相手の戦力分析から入るのではなく、もう少し穏便に済ませようと為てください」


肩を竦め応接室に急ぐ神原と後を付いて行くピナカ。



「お待たせして申し訳ない」


謝罪と共に応接室に入ると中の人物はお茶を飲んでいる所だった。

入ってきた2人を見て慌てて立ち上がると頭を下げる。


「お初にお目にかかります。ケインと申します」

「前置きは結構です。時間が無いので単刀直入に聞きますが……何が欲しいので?」


ケインを椅子に促し、自分も椅子に腰を下ろす。


「我々が欲している物は水と食料です」

「本当にそれだけでいいので?」

「……それとこの島にいるであろう人物を探してます」

「あなた方が探している人物はこの島にはいません。水と食料は3日分を用意します」


それで十分でしょうと続けようとした神原だが、続くケインの言葉に上げかけた腰を下ろす。


「ダスト殿からその方の特徴を伺い、我が国の巫女によりこの島にいるとお告げを受けました」

「では貴国はその人物を見つけ、どうするつもりですか?」

「それは言えません」


互いに腹を探りあう沈黙が漂う中冷めたお茶の代わりを入れるピナカの出す音のみが応接間に響く。


「申し訳ないがお引き取り願おう」

「構いません。場所はわかりましたし、次はより多くの船団で来ます」


水と食料も予備を積み込んで来ますと口に出すと腰を上げる。


「何か勘違いしているようですが……」

「まだ何か?それとも気が変わられましたか?」

「ここから生きて帰れるといつから思われていたのですか?」


刹那、ケインは己の首筋の冷たい感触で死を覚悟する。


「まずはお掛け下さい。お互いの利益の為に」

「拒否権はないのでしょうね」

「無理な事は申し上げません」


この後、昼過ぎから始まった交渉は日が落ちるまで続けられた。



「お気を付けて。それとダストにたまには顔を出せと伝えて下さい」

「わかりました。今回の交渉はとても実り大き物でした。わが国の巫女も安心します」

「ではなおのこと無事に帰国されなければなりませんな」

「全くです」


小舟に物資を積み込みピストン輸送するのを眺めながら、握手を交わす2人。


「しかし、契約書代わりにあんな少女を預けるとは思ってもいませんでした」

「契約書代わりではありません。貴方達にダストの下まで送り届ける様依頼しただけです」

「これは失礼。しかし、彼女は貴方の仲間では?」

「彼女はここに流れ着いた者です。我々とは関係ない」


それきり口をつぐむ神原に問いかける事を諦めるケイン。

神原の視線の先にはピナカに抱きつくジュノの姿があった。

しばし抱き合ったジュノとピナカだが、神原を見つけると駆け寄ってくる。


「りん兄……行ってくる」

「その目で世界を見てこい。縁があったらまた会うだろう」

「いつかまた会いにくるよ」

「気長に待ってるさ」


神原にもピナカ同様抱きつき、神原はその頭をなでる。

じゃあ行ってきますとのジュノの言葉でお互い離れ、小舟に乗り込む彼女を見送る。


「では私もそろそろ行きます」

「道中お気を付けて」

「我が国は貴方方が来られるのをお待ちしております」

「時間が取れ次第伺います」


ジュノとケインを載せた小舟が沖合いのガレオン船に向かうのを眺める神原とピナカ。

その背中はどことなく寂しさを滲ませていた。


「マスター……」

「これでよかったのさ……」

「……」


神原がジュノに下した処分はミドガルズ本島およびグロッティより追放。

追放先を探していた所にケインが来たため渡りに船とばかりに便乗させた。

追放先にはダストもいる故、心配はしていないがまだ少女独りで生き抜くにはこの世界は厳し過ぎる。

そして、神原の懸念事項はもう一つ。


「面倒事は何もしなくても向こうからやって来たな」

「対策を練らなければなりませんね」

「あぁ……だがまずは情報を集めなければ」


ケインから最近、ギルドの掲示板に指名先不明の依頼書が貼られているという話を聞いた。

その依頼書の写しを見せて貰った神原だが、そこにはこう書かれていた。


「この文字が読めるなら身を隠せ」


と日本語で書いてあった。

更新が遅くなり申し訳ありません

作者の拙作を見て頂きありがとう御座います

次回更新ですが、作者の実習試験のため3ヶ月程度後になるかと思われます。

更新間隔が伸びて申し訳ありません

更新予定日近くには割烹でお知らせ致します(伸びるかもしれません)

5/8

誤字訂正

ダストの事をダストンと表記為ておりました

大変申し訳ありません

最後の数行を改稿しました

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