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case44

ぎりぎり年内に間に合った

短くて申し訳ない(´・ω・`)

「ええいまどろっこしい!ヘリを呼べピナカ!」

「そんな無茶言わないで下さい!」

「ちくしょう!ヘリが無理なら屋根の上行くぞ!」

「あぁもう……後で請求書回されても知りませんよ!」


ジュノ達が文字通り命を掛けて時間を稼いでいる最中、神原達は市場を行き交う人混みの中をぬう様に走っていた。


「構わん!その程度今は無視しろ!」

「はぁ…分かりました」


諦めの感情混じりのため息を漏らしつつ、積んであった木箱を足場に屋根の上に登って行く。

幸いこの市場の屋根は緩やかな傾斜のついた屋根だった為、走るのに障害は無かった。


「居ました!2キロ先の人集りの中心です!」


そして神原達が人集りを見下ろせる位置についた時、それは起きた。


絹を裂くような悲鳴が神原達の耳に届く。

そして、倒れる人影が一つ。


「おい嘘だろ」

「マスター、まずは敵の無力化が先です」

「向こうももう気がついてるだろう」

「なら急ぎましょう」



足元にシエスタが倒れてる。

グルジアさんがスリアちゃんを抱きしめて、これを見せないように為てる。

シエスタから紅い水が染み出してきた。

私はただ呆然と立ち尽くしていた。


「やるじゃねぇか嬢ちゃん」


私の後ろから声がかけられる。

肩に手が置かれて更に続けて言われた言葉で、無意識に身体が動いた。


「そいつらも殺せ。そうしたら仲間にして…」


最後まで言わせる前に腹にナイフを突き立てる。


「黙れ…貴様の仲間になるつもりなどない」


突き立てたナイフを捻り引き抜くと、そいつは倒れた。


「生きて帰れると思うなよ」


自分の口から出たと気がつくのには、暫く時間が必要だった。

崩れ落ちる男を見届けず、グルジアが予備のナイフを抜き更に1人を無力化する。


「どうする?まだやる?」


残った1人に問いかけるとそいつは逃げ出した。

しかし、すぐに地に膝をつく事になる。


「ここで何が起きたか説明を要求する」


この街の自警団により逃げようとしたやつは捕縛され、私やグルジア達が囲まれた。


「武器を置いて手を挙げろ!」

「言うとおりにするからこの人を助けて」

「おい!怪我人を運ばせろ!!」


武器を捨てて言うとおりにする私達に手枷がかけらるその時、待ち望んだその人は来た。


「ピナカ。シエスタにポーションの使用を許可する。なんとしてでも死なすな」

「お任せ下さい」

「ジュノ、よく頑張ったな」


その人に抱き止められ、頭を撫でられて漸く張り詰めていた糸が緩んでいく。


「りん兄……ごめん」

「説明は後で聞く。こっちはこっちで片付けなければならないからな」


それだけ聞いて私は意識を手放した。



腕の中で意識を失ったジュノを抱き上げ、自警団に向き直る。


「お待たせしたようで申し訳ない」

「構いません。観衆から大まかな状況を聞いております」

「今から出頭する必要はありますか?」

「明後日にでも領館の方にご足労頂ければ大丈夫でしょう」

「わかりました」


シエスタもピナカに肩を貸されながらではあるが、歩ける程度に回復した。


「マスター。シエスタさんはご覧の通りです」

「よくやったピナカ。シエスタ、この埋め合わせは必ず」

「期待しておくよ」


弱々しく笑うシエスタに任せろと言う神原。

グルジアもスリアを抱えて合流し、グロッティへの帰路につく。



「よろしかったのですか?あのままま行かせてしまって」

「構わないさ。あの店に関してはそれなりの対応をしていればこちらに危害はない」

「なるほど」


そんな会話をしつつ神原達の背中を見届けると、自らの職務に戻る自警団の2人だった。



「シエスタ!大丈夫なの!」


グロッティに戻った神原達は、留守番を任せたルシアのシエスタを心配する声に出迎えられる。


「姫様……。私は大丈夫です」

「でも顔色が!」

「既に処置は受けております。後は休んでいれば治りましょう」


2人のやり取りを余所にピナカからもう片方の厄介事の状況を聞く。


「恐らく明日にはいったほうがよいかと」

「だよなぁ……時間稼ぎもそろそろ限界だろうしな」

「なので明日午前中には対策して頂きたく」

「了解した」


そんな会話をしていたが、2人にとって予想外の事態が起こる。


「シエスタ姉、ルシア姉ごめん」


シエスタとルシア2人に向かい土下座をするジュノ。

2人が何事かと面食らっているうちに更にジュノの独白は続く


「シエスタ姉が怪我をしたのは私のせい」

「……他に方法はなかったの?」

「あったかもしれない。シエスタ姉が怪我をせず、誰も傷つかない妙案があったかもしれない。」


頭を上げず、それでも私にはそれしか思いつかなかったと続ける。

暫くその謝罪を聞いていたルシアは一段落ついたと感じると、ジュノに語りかける。


「その時の貴女のやり方は間違っていたのかもしれません。シエスタも傷を負っていますので、その件は私とシエスタと店長さんとで協議します」


冷たい言葉がジュノに降りかかり

その身体を振るわせる。


「と、ここまでが公の身分としての私からです。ここからは私個人の意見です」


そう続けると寒さではない何かに震えていたジュノの身体を優しく抱き締める。


「よく皆無事に帰って来てくれました」

「ごめん……ルシア姉」

「良いのです。結果としては皆ここに居るのですから」

「…」


ルシアにしがみつき嗚咽を漏らすジュノと柔らかく抱き止めるルシア。

その様はまるで親子の様な暖かい物を感じさせた。


「皆さんホットミルクが出来ましたよ」


タリタニアの館に引き継ぎの為暫く居なかったイリアからホットミルクが各人に手渡された。


「済まないな。帰ってきてそうそう仕事させて」

「全くです。特別給金を要求します」

「考えておこう」

「行ってみるものですね。はい……ジュノちゃん」


イリアからカップを手渡され、複雑な顔をするジュノ。

同じようにカップを手渡されたルシアがそれに気づく。


「今は気にせずに……ね」

「でも……」

「少なくともここにジュノちゃんがいて、気を悪くする人はいないよ」

「……」


暫くカップのホットミルクを見つめていたが、ゆっくりと口をつけ優しい香りごと咽に流し込む。


「……おいしい」



何処か暖かく、それでいていつもとあまり変わらない風景がそこにはあった。



更新頻度は落ちますが、

来年もよろしくお願い致します

2/27前半部分の下書きの残りを削除しました

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