cace42
近いうちに今までの誤字脱字の修正と題名変更するはずです
キャス狐馳せ参じません(半ギレ)
久しく訪れていなかったその庭園は初めて訪れた時と変わらない様相だった。
辺りを見舞わし、他よりも一回り大きい水路に沿い目的地に向かい歩き出す。
「……」
始終無言で目的地まで歩く事30分程、目的地であるこの庭園にどこか不釣り合いなログハウスが見えてくる。
「ほぅ……」
目に入った光景に思わず感嘆の息が漏れる。
最後に訪れた時には無かった木の柵で周囲が覆われており、柵の内側で咲き乱れる花園を護るようにログハウスの周囲に張り巡らされていた。
花園の中に通された道をたどり、見慣れたログハウスの扉を開くと目的の人物はやはりそこにいた。
「そろそろ来る頃だと思っていたよ」
最初に会った時と全く変わらない姿のままアイリスはお茶を飲んでいた。
「ずいぶんとくつろいでいるな」
「私の庭で、私のログハウスでくつろいでどこに問題が?」
「予想はついているだろうに」
そのままアイリスと対面の椅子に腰掛けると、テーブル上にあったカップに自分の分のお茶を注ぎ込む。
「まぁいい。聞きたい事は1つだけだが構わないか?」
「いいよ。ただし、答えられない質問もあるからね」
「なに、簡単な事だ」
手に持っていたカップをソーサーごと静かにテーブルに置くとその質問を口にする。
「なにをしようとしている?」
自らを真っ正面から見据える神原にアイリスは眉1つ動かさずに返答する。
「それは幾つもの意味を含んだ質問だね」
「答えてもらいたい」
「明日か、明後日か。はたまた果てしない未来の話なのか、またはそれら全てなのか……」
口元に運んだカップをソーサーに置くと妖しげな笑みを浮かべながらその続きを口にする。
「だけど貴方が聞きたいのはそれじゃない」
「……」
「私の目的はただ一つ。そしてそれは答えられない質問だよ」
2人の間に沈黙が舞い降りる。
カップのお茶に二杯目が注がれる程の時間お互いに目すら逢わせなかったが、神原がその沈黙を破る。
「事実は歴史となり歴史は伝説となる。やがてそれらはおとぎ話となり人々の記憶から失われる」
「それが人の、意思ある生き物の生き方だよ。仕方がない」
「そうだ。だから俺は絵本を読み尽くした」
「……」
その発言を聞いてアイリスから生暖かい目で見られるが、構うことなく続ける。
「そしてその中に気になる事が1つあった」
かつて4つの偉大なる者がいた。
しかし、4つの偉大なる者達は互いに争い世界は荒れ果てていた。
その事態を重く見た神様は新たに2人の女神を生み出した。
神様は偉大なる4つの者達にその2人を見守り傍に居るように頼んだ。
嫌嫌ながらも引き受けたが、やがて彼等は自ら純粋な2人の良き護り手になるという共通の意思の元、争いは無くなっていった。
他の神々も2人を見守りつつ、2人を導いていった。
「この世界に広がってる一般的なおとぎ話じゃない。どこが気になったのよ?」
「まぁ、そう慌てるな。呆れた顔で俺を見ても結論はまだ出さないからな」
「なるべく短くして。長い」
「しょうがないな」
アイリスからの苦情でその後の物語を端的に話す神原。
結局2人のうち1人は人々の幸せを司る神となった。
だが、人々の幸せには他人の不幸も含まれていた為次第に彼女は壊れていった。
「私の幸せは何?誰がくれるの?」
彼女は人々の幸せを司る神から人々に災厄をもたらす神になり、4つの偉大なる者と共に残されたもう1人の女神の名と共に封印された。
人々に災厄をもたらす女神は封印され、人々の間には平穏がもどった。
しかし、彼女は今もこの世界のどこかに4つの偉大なる者と共に封印されている。
「って話だ」
「結論は?」
一仕事終えた顔でカップに手を伸ばす神原にもはや絶対零度となったアイリスからの言葉が突き刺さる。
「お前、残された女神だろ」
「その証拠は?」
「ない」
「ならただの言いがかり」
話は終わりとばかりにアイリスもカップに手を伸ばすが、神原の言葉で伸ばした手が止まる。
「嵐の中神々と4つの偉大なる者達は自らの愛し子を地に縫いつける」
「……それは?」
「なに、ちと聞いた口伝さ。続きもあるぞ」
「……」
カップに伸ばした手を引っ込め、うつむくアイリスに歌うように口伝を口にする。
「残された愛し子は自らの名にかけ異界より混沌を呼び出し最愛の家族であり、地に縫いつけられし愛し子を救済する」
「……」
うつむいたまま顔を上げないアイリスに神原は自らの推理を口にし、反応を見る事にした。
「タリタニアへのお告げ、島の地下にあったダーインスレイブと兵器プラントと技術資料、遅すぎるギルドからの追っ手。そして、異世界から呼び出された俺」
「……」
「それらと伝承を結びつけたが、外れだったらすまない。謝罪する」
そう言って頭を下げる事数秒。
神原にとっては数時間近くたった様に錯覚するほど重く苦しい沈黙が舞い降りた。
「……人間の癖によくそこまで考えたね全く」
「で、結果は?」
「私の目的はまだ秘密。女の子を泣かせた罰よ」
「……そうか」
「今女の子とか言える年じゃないだろとか口に出したらここから帰れなくなってたから」
「大変申し訳ない」
冷や汗をかきながら頭を下げる神原にもはや密度をもった殺意をぶつけるアイリス。
「まぁいいわ。この話はお終い」
「わかった」
「私からも質問いい?」
「構わないが……」
先ほどまでの殺意は霧散し、そこにはただ1人の少女がいた。
「目的を話さずに何かしようとしたら貴方は着いてきてくれる?」
「……必要な事ならな」
「その答えで十分よ。今はね」
「そうか」
カップに残ったお茶を飲み干し、席を立つ神原。
「また用があったら来る。それと……」
「何?」
「今日はピナカが料理番なんだが、家で飯食わないか?」
「……ふふっ」
扉の前で振り返りそう問いかけると、アイリスは小さく笑い満面の笑みで頷いた。
その日グロッティの食卓では1人客人がいたが、皆家族として接っし暖かな空気がそこにあった。
最後に1つ残った唐揚げに対し、客人と調理した者の争奪戦が繰り広げられたのは別の話である。
短いですが、切りがよかった為こなへんでお許し下さい(土下座)
また来月の下旬から末位には更新したい(願望)