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cace39

「店長さん何やらかしたんですか!?」


そう言って神原達が城の食堂で朝食をとっている所に入ってくるルシア。


「何って?普通に会話しただけだぞ」

「普通に返したならば兵達がなぜこんなに離れてるのですか!」


チーズとハムを乗せ竈で焼き上げたパンにかじりつきながら返答する神原に詰め寄るルシアとその様子を遠巻きに眺める兵達。


「さてな。ルシアとこうして気軽に話してるからじゃないか?」

「た、確かに……」

「だろ?まぁこれ食い終わったら帰るし気にするなよ」

「わかりました。帰りの護衛もお願いいたします」

「あいよ」


再びパンにかじりつく神原を呆れが混じった目で見てからその場を後にするルシア。



行きと同じくアリア達が同行しながらバリムの街まで帰る神原一行。

帰りは行きと違い何処か気まずい空気が流れていた。

原因はルシアが神原に言った一言。


「店長って見た目人間ですけど中身悪魔ですね」


思い当たる節しかないのか辺りを見回すが、神原をフォローする者はおらず皆神原から顔を背けていた。

帰りの馬車に揺られながら誰かがフォローしてくれるだろうと思っていた神原は、昼前にバリムの街についても結局誰にもフォローされずにグロッティへと入っていった。

その背中は何処か煤けていた。


「いらっしゃいませ……ってりんさん。お帰りなさいませ」

「おう、ただいまイリア。何か変わった事はあったか?」

「何もありませんでしたよ」

「わかった。スリアとグルジアは?」

「今はお昼を食べに街へと行ってます。先程行ったばかりなので帰ってくるのはまだ先かと」


カウンターに座っていたイリアに居ない間の売上等を聞きながらカウンター端の定位置に陣取る。


「そういえばりんさん。タリタニア様から顔を出すように言われてます」

「今すぐ行かなきゃヤバイ事か流動的な面倒事以外は行きたくない」

「ちなみに時間が経てば経つほど厄介になっていく事です」

「はぁー……行くか」


渋々と顔を上げると扉に向かって行く神原。

扉に手をかけた所で立ち止まりジュノを呼ぶ。


「なんでしょうか?神様」

「なに、ちょっとここの領主に新しい家族を紹介しようかと思ってな。それと、神様呼ばわりはそろそろ変えてくれ……」

「わかりました。りん兄さん」

「さんはいらん。その方が呼びやすいしな」

「じゃあ……りん兄」


その呼び方に満足したのかジュノの頭を軽く撫でると着いてくるように言う。

道中露店に目を輝かせ、神原と露店の商品を行ったり来たりする目線。

苦笑いし、ジュノに欲しい物を問うと躊躇いながらも花を象った髪飾りを指差すジュノ。

店主に金を払い髪飾りをジュノに渡すと、笑顔が溢れる辺りは年相応の少女である。

ジュノにせがまれ髪飾りを着けてやると満足したのか鼻唄を歌い出す。

その様子を少し後ろから見ながら目的地である領主タリタニアの屋敷を目指す。



ジュノの楽しげな様子と街の活気でタリタニアの館には気がついたら着いていたと言うほど時間はかからなかった。

門が見える所まで来るといつぞやの門番が周囲に目を光らせていた。

門に近づく神原に気が付くと槍を身体に寄せ今一度直立の体制をとる。



「やぁ、今日は引き留めないのかい?」

「その説は申し訳ありませんでした。話は伺っておりますゆえどうぞお通りください」

「ふむ。この子は引き留めなくていいのかい?」


神原のからかいに苦笑いで言葉を返す門番。


「かの名高い蒼の行商人殿が連れている者ならば問題は起こさないでしょう。それとも問題を起こしますか?」

「クックック、こいつは一本取られたな」

「貴方を唯一引き留めた門番ですからね。真面目な命知らずなんて仲間から呼ばれて居ますから多少は意趣返しをと」

「また壮大な意趣返しだな。それで俺が気分を害さないと思ったか?」

「ご冗談を。寧ろどう返してくるか期待したのでは?それに蒼の行商人殿は心が広いと聞いております」


その答えに肩を震わせるジュノと小さく笑い声を漏らす神原は、目の前の門番に銀貨を1枚握らせて今日の飲み代にしろと残し敷地中に入っていく。

後には何かを成し遂げた顔をした門番とため息をつくもう一人の門番が残された。




屋敷の中を勝手知ったる我が家の様にタリタニアの執務室に向かい進んでいく神原とジュノ。

途中メイドと何度かすれ違うが、皆頭を下げて脇に避ける。


「りん兄何したの?」

「……思い当たる節はないぞ」

「そう……」


何処か諦めの混じったため息を付きながら神原に着いていくジュノ。

目的の部屋にたどり着いたのか扉の前で立ち止まる神原。

扉に三度ノックをすると中からどうぞと声が帰ってくる。


「失礼。お呼びと伺ったがいかなる用件か?」

「まぁかけてくれ。茶もだそう。そちらのお嬢さんは何か注文はあるかな?」

「では、領主様のお勧めを」

「承った。すまないがリーベルクランジュースと茶を2杯持ってきてくれ」


執務室にて書類仕事をしていたタリタニアは神原とジュノにソファに座るよう薦めると控えていたメイドに茶菓子と飲み物を持ってくるようにいう。

すぐにそれらが運ばれると人払いを命じ、タリタニアの纏う空気が変わる。


「身に覚えがないとは言わせないぞ。薬術店グロッティ店主リンカンバラ殿……いや、蒼の行商人にしてこの世界に破壊と救済をもたらす異邦の民よ」

「……なるほど。何処まで知らされた」

「君がこの世界の住人ではない事、世界を相手にしても勝てる程の力があると」

「ふむ……。そいつを教えてくれた奴の特徴は言えるか?」

「その者からはこう伝えればわかると聞いている」


神原とジュノはタリタニアが紡ぐ言葉に耳を傾ける。

そしてタリタニアはゆっくりとその言葉を口に出す。


「味噌汁は可能性に満ちている」


神原は溜め息をつくが、タリタニアは至って真面目な顔をしていた。


「神自ら私の前に二度もお姿を表されたのだ。信じないわけがない」

「二度もって一度目は?」

「あの海戦の三日前さ」

「……なるほど。それで色々便宜をはかってやれとか言われたわけか」

「正確には出来る範囲で良心が痛まない程度にという事と、三日後に世界に破壊と救済をもたらす者がくると言い残されていったのさ」


神原は漸く納得した。

なぜ、タリタニアは都合よく神原が訪れた日になんのアポもない自分とあったのかを。


「なるほどな。で、用件とは?」


神原の問に対し、それはな……と前置きをするとこう述べる。


「これからの話をしようじゃないか」


その顔はまるで新しい玩具を与えられた子供のような笑顔だった。




今月の更新はこれだけになるかと(´・ω・`)

次の更新は来月になると思いますが、来月近くには割烹を更新するので詳しくはそちらを(´・ω・`)

誤字脱字等ありましたらご指摘いただけたら幸いです

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