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cace37

寝落ちして1分前までは(ryできなかったorz


棺の並ぶ地で彼方此方から愛する者を無くした悲しげな声が空に響く中、従者は主に疑問を投げ掛ける 。


「我々は……何を相手にしているのですか?」

「……この世界だ」


その答えは従者に対してなのか、はたまた主自身が己の意思の確認の為に言ったのか……



「だぁぁぁぁ!作業ピッチあげなきゃ終わらねぇぇぇぇ!!」

「マスター。口を動かすなら手を動かして下さい」


グロッティでは今ポーションが不足するという事態に対し、投げ売りするかの如くポーションを作成していた。


「リンさんギルドから追加の注文が来てます」

「んなもん燃やしちまえ!現状で手一杯なんだよこっちは!!」

「後店先にもポーション購入の為、人が押し掛けてますがそちらはグルジアさんが対処してくれてます」


ポーションにコルクで蓋をする神原とピナカを見ながら報告を終えたイリアは露店で買ってきたジュースに口をつける。


「表の客には番号書いた木札渡して名前だけ控えとけ。ピナカ何度も並ぶ奴が居ないように見張り頼む」

「わかりました」


そう言って席を立つピナカの背を横目にピナカに戦闘の事後処理をしていた時に聞かれた事を自らの中で反芻していた。



「今回の戦闘での死者34名、重軽傷者多数……以上です」

「そうか……」


神原とピナカの前には棺が並びそれにすがり付きその名を呼び叫ぶ者の声だけが悲しげに響き渡っていた。


「彼等は何を思って逝ったのでしょうかね……」

「……少なくともあの場にいる者達の事は間違いないだろう」


神原とピナカの元に一人の男の子がやって来た。

年の頃は未だ10にも満たないような幼子が神原に向かって走りよる。


「マスター」

「わかってる」


走りよる幼子の進路に立ち塞がるように立つ神原の護衛を手で制止し、片膝をついて目線を合わせると話かける。


「私に何か用はあるかい?」

「パパは……何処に行っちゃったの?」


真っ直ぐ神原の目を見つめならがら問いかけられ、神原も見つめ返しながら返答する。


「君のパパは我々の手が届かない場所に行ってしまったんだよ」

「また会える?」

「もちろんだ。今は会えなくとも君の心にもパパはいる」

「うん」


うつむきながらもそう返事をした時に新たな声が割って入ってくる。


「ショー!何やってるの!」

「パパにまた会えるか聞いてたの」

「まぁ……総司令殿申し訳ありませんでした。子供のする事なのでどうか平に……」


鮮やかな緑色の髪を持ち、どことなく幼子と似た顔立ちの女性が神原に頭を下げる。


「フィーリア……君の子だったか……なら相手は……」

「ジャックです……この子の目元はあの人そっくりなんですよ」

「そうか……惜しい人物を亡くした……」

「あの人の……あの人の最後を知ってる人はいますか?」


神原は辺りを見回すと一人の人物が前に出てくるのを見てピナカに目配せする。

それを察してピナカはショーを連れてこの場を離れるのを確認すると、天幕まで移動し彼は話始めた。



「自分とジャックはバディを組んだ仲間だけでなく、公私を共にし、共にバカをやって上官によく怒鳴られていました。いい奴だったのに……」


彼はジャックとの馴れ合いからやったバカな事、果てはどちらが早く嫁を見つけるかまで競っていた事などを話す。


「ジャックの最後はとても勇敢でした……。強姦される幼い子供を助ける為に飛び出していったんです。左腕を吹き飛ばされても幼い子供を背中に守り通しました。それと……」


胸ポケットから小さな箱を取り出すとそれをフィーリアに渡す。


「これは……!」


その箱の中には指輪が入っていた。


「ジャックは最後まで貴方と息子さんの事を自慢してきました。そしてジャックから貴女方を支えるようにとも」



その言葉で泣き崩れるフィーリアの声はここには居ない者に届けるかのように天幕を抜け空へ吸い込まれていった。


「……世界は誰にとっても残酷ですね」

「世の中や自分の身の回りからはいい奴から居なくなっていくもんさ……」

「マスター。我々は……何を相手にしているのですか?」

「……この世界だ」



「マスター。整理札の配布完了しました」

「ん?あぁお疲れ。看板をクローズにひっくり返したら今日は店仕舞いだ」

「既にひっくり返してあります。あ、イリアそれ一口下さい」


イリアから受け取ったそれを口に含むと顔を歪めるピナカ。


「……イリア、これ何ですか?」

「ん?ムヌエムジュース」

「なんでこんなミネラル過多な味になってるんです?」

「南の国じゃ貴重な水分補給元らしいよ」

「納得しました……」


二人のやり取りを聞きながら手を止める事なくひたすらポーションを入れた瓶にコルクで蓋をする神原。

他愛もない話で盛り上がるピナカとイリア。

ポーションの供給不足により、作製に追われる以外何時もの日常が始まるはずだった。


「店長!」


荒々しく入ってきたグルジアに面倒事の気配を感じとる神原。


「先ずは落ち着きましょう。そして厄介事なら忘れて下さい。店長はいません」


カウンターの裏側にしゃがみこみ、姿を隠す神原の対応に困るグルジア。


「店長……表にまって居られますので……」

「ちなみにどちら様?」


目から下をカウンター下に隠したままグルジアに問うがその答えとは……


「この国の王族からの御迎えです」


神原だけでなく理由は其々だが誰もがあまり会いたくないと思う相手だった。

最も神原を含むごく一部以外は畏れ多いという畏敬の念がまじった理由だが。


「絶対報奨渡して終わりじゃないだろ。そこんとこ王族としてどうなんよルシア?」

「恐らく爵位と土地が与えられるかと……」

「と要らぬ面倒事を背負いこむことになるので丁寧にお断りしていて下さい」

「それが……」


気まずそうに店のドアの方に視線を向けると、それを察しピナカがドアを開ける。

そこには磨きあげられた鎧を身に纏った騎士と執事服を纏った女性が一人いた。


「リンクァンバーラ殿は居ますか?」


そう言いながらも真っ直ぐにカウンターから顔を出す神原を見据える。

その問に彼は一言


「いません」


とだけ答え、再びカウンターの裏側にしゃがみこみ身を隠す。

彼を除きグロッティの面子は同じことを思った。


((((クァン…バーラ?))))


名前は未だに間違えて覚えられたままだったようだ。

ちなみにピナカとイリアは肩を震わせて壁の方を向きながら作業してるふりをしていた。


「申し訳ないがここにリンクァンバーラ等という人物は居ない。お引き取り願おう」

「しっ、しかしここにポーションを作り先日の防衛戦で貢献していただいた方が此方にいると伺ったのですが……」


狼狽えながらも食い下がる彼女に対し神原はピナカに用意して貰った紅茶を飲みながら対応する。


「その者ならば居ますがクァンバーラ等という者はうちにはいません。後現在は閉店中です」

「では、その方を出していただけますか?」

「その前に1つ確認したい事がある」


なんでしょうかと促す彼女に神原は特大の爆弾を投げ掛ける。


「この国の法では相手の名前を間違えるのは大変失礼に当たり、国王も例外ではないと」

「そうですね。非常に失礼に当たります」

「所で、件のポーションを作った人物とリンクァンバーラは同一人物であり、違う人物と言えます」

「どういう……事でしょうか?」


紅茶を一口喉に流し込み、喉を潤す。


「私が件の人物であり、薬術店グロッティの店主でもあるリンカンバラです。リンクァンバーラではありません」


この言葉に真っ青になる執事服を纏った女性だが、滝のごとく冷や汗を流しつつ神原に食い下がる。


「も、申し訳ありません。まさか名前の伝達に間違いが起こるとは思いもしませんでした。今後は確認を徹底させますのでどうか平に……」

「この場合民間人相手でもどうなるんですかね?」

「お、恐らく何らかの謝罪がなされるかと……」


ほぅと頷いた神原を前に顔が真っ青処か白くなっている彼女にルシアが助け船を出す。


「店長さん、その辺りでアリアをからかうのをやめていただけますか?」

「おっとこれは失礼」


まったく悪びれた様子無く肩をすくめる神原を横目に、アリアと呼ばれた執事服を纏った女性に向き直る。


「アリア、誰が誰に呼び出しをしたのですか?」

「ひ、姫様!何故このような場所に……」

「後で説明します。質問に答えて下さいアリア」

「……先の戦闘並びにポーション作製において功績を挙げた民間人リンクァンバーラを国王が呼び出したのです」


ルシアを前にして、この切り替えの早さが有能さを表している。

しかし、今回は相手が悪かった。


「名前を間違えるだけでなく、身分すら間違えた場合に父はどうするんですかねぇ?」

「私では判断ができません故、なんとも申しあげられません」

「そうでしょうね。迂闊に憶測を言っては言質を取られかねませんから」


まぁ良いでしょうと言い残し、神原の隣に座る。

すかさずピナカが紅茶とお茶請けをルシアの前にだし、ルシアの後ろで待機する。


「申し訳ありませんが本日はお引き取りください」


神原の言葉に頭を下げ、帰還しようとするアリアに待ったを掛ける人物がいた。


「申し訳ありませんがそういうわけにも参りません。王命です故」


まだ若い新米故なのか、臆する事無く神原に言い放つ。

その後ろでアリアがお止めくださいと言っている事からある程度の地位とこれが彼の独断専行である事だと分かる。


「申し訳ないが茶番は他所でやっていただきたい」



そう言う彼の内心はこう思わざるをえなかった。


(めんどくさいから難癖つけて断ろう)


未だに押し問答をしている二人を見て早く帰れと言わなかっただけマシである。

誤字脱字ありましたら御指摘お願いいたします(´・ω・`)

感想もありましたらお願いいたしますorz

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